研究課題/領域番号 |
19H02219
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
加納 陽輔 日本大学, 生産工学部, 准教授 (50451315)
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研究分担者 |
新田 弘之 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 上席研究員 (00355869)
秋葉 正一 日本大学, 生産工学部, 教授 (10267031)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アスファルト / 舗装用素材 / リサイクル / 高温高圧水 / 亜臨界水 / 持続的利用 |
研究実績の概要 |
令和4年度の研究においては,令和4~5年度計画における学術的問い「老化と回復を繰り返したアスファルトの性状は?」の解明に向けて,昨年度成果に基づく最適条件(350℃)により老化と回復を繰り返したアスファルト(以下,繰り返し回復As.)の性状を評価した.供試体は,TFOTおよびPAVによって針入度(1/10mm)を20まで促進劣化させたアスファルトを用い,水熱分解法による繰り返し回復As.と再生用添加剤により老化と再生を繰り返したアスファルト(以下,繰り返し再生As.)の性状を比較評価した.ここで,繰り返し回復・再生As.とも規格値中央にあたる針入度70を目標とし,水熱分解法により目標に達しない場合は,再生用添加剤により補足した.また,令和4年度ではより効率的な若返り技術の開発を目指して,回復効果の促進を期待した触媒を試作し,これによる回復As.を併せて評価した.評価は,劣化・回復または再生の都度,以下の試験によりa)化学的性状とb)物理的性状を確認し,繰り返しに伴う性状変化から再資源化技術としての持続可能性を検証した. a) 化学的性状 化学的性状に対する回復効果を赤外吸光度および組成分析より確認した.赤外吸光度は,フーリエ変換赤外分光光度計を用いた全反射測定法により,酸化に伴う酸素含有官能基の増加に着目してカルボニル・インデックスを求めた.組成分析は,薄膜クロマトグラフ法により測定し,構成成分比率より回復効果を確認した. b) 物理的性状 物理的性状に対する回復効果を針入度,軟化点,伸度より確認し,さらに各結果から針入度指数を求めてアスファルトの感温性に及ぼす影響を確認した. 以上から,繰り返し回復As.は繰り返し再生As.に比べて新規アスファルトの性状に類似し,かつ老化が進行しづらい可能性を確認した.令和5年度においては, 5cycleの繰り返しを目標に評価を進める.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度までの研究は当初計画に沿って順調に進捗しており,旧アスファルトの若返りを目的とした水熱分解法の最適条件や再資源化技術としての持続可能性に関し,現時点で期待する効果および知見を概ね得ることができた.しかしながら,同時に大型化や効率化に関する新たな技術的課題も明らかになりつつあり,引き続き実装を視座に当初計画に沿った基礎的検討と併行し,例えば以下の課題解決に対しても積極的に取り組む必要がある。 ・最適条件に基づく装置の大型化と若返りプロセスの効率化を目指した具体的検討 ・多様な添加剤や改質剤を含有した旧アスファルトに対する水熱分解法の適応性の確認 ・回復As.の特性を考慮した付加価値の高い利用・配合方法の検討 ・回復As.を配合したアスファルト混合物の諸性能および長期供用性の評価 以上の進捗および課題発見・解決の状況を踏まえて,現在までの進捗を「概ね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」および「現在までの進捗状況」に述べたとおり,現在までの研究実績・進捗とも概ね順調に進展している.この状況と成果を踏まえて,今後も引き続き当初計画に沿った研究成果の維持・向上,ならびに新たな課題発見・解決に対しても積極的に取り組むとともに,令和5年度においては,計画全体の総括としてさらなる研究の進展につなげる成果の取りまとめおよびそれらの発表に努める.以下に,計画の遂行とその推進方策を概説する. 令和5年度計画の学術的問い「老化と回復を繰り返したアスファルトの性状は?」に関して,令和4年度においては当初計画に沿った基礎的検討に加え,効率化を期待した触媒や省力化を期待した溶媒などを応用して,装置およびプロセスのさらなる改善を試みた.このなかで,いくつかの触媒および溶媒を応用することで,実用化に向けた課題解決を助ける可能性が認められており,引き続き計画遂行と併行して,実装を視座とした試行錯誤を積み重ねる。また,前述の進捗状況に挙げた新たな課題に対しても,本期間内に可能な限り手掛かりを得て,今後の計画を具体化し,研究の継続と進展を目指す。 以上の方策により本研究課題においては,引き続き核心的問いである「老化したアスファルトの性状を水熱分解により若返らせ,持続的利用を実現できるか?」の究明を目指す.
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