本研究では,鋼構造物の維持管理上重要な現有性能等の状態把握を行うことを目的として,①損傷進行に伴う応力等の状態変化特性の解明,②状態変化による耐荷力への影響の検討,③状態変化の検出方法に関する検討,④現場実験による鋼橋梁部位への適用性の検証,⑤点検時の簡易計測法としてのシステム構築,⑥効果的な損傷補強対策に関する考察を実施している.2021年度は,以下の内容について検討を行った. (6)疲労損傷による応力状態変化に関する検討(テーマ①,テーマ③):疲労損傷を有する鋼部材においては,亀裂部付近での残留応力,死荷重応力の低減,活荷重応力分の変動低減,周辺での応力増加が予想される.このような亀裂発生に伴う応力変動挙動について代表的な溶接継手を対象として,解析的な検討,および溶接試験体に対するセンサを用いた実験的検討を試みた. (7)点検時の簡易計測法としてのシステム構築(テーマ⑤):携帯性を高めたポータブルなシステムとして計測方法の構築について検討し,トラス橋梁等を対象として,モニタリングポイントの設定方法について解析的な検討を踏まえ考察した.人がアクセスできない箇所にアプローチする点検ロボットへの搭載へ向けた課題などについて検討した. (8)効果的な損傷補強対策に関する考察(テーマ⑥):損傷に伴う応力状態が変化していることを考慮して,より効果的な損傷補強対策について検討し,FEM解析によりその有効性について検討を進めた.腐食損傷を有する鋼部材に対するボルト継手による補強等の効果を検討した.またこの検討の際,開発したシステムのボルト継手の状態評価への応用についても考察した.
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