研究課題/領域番号 |
19H02223
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
齊藤 大樹 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00225715)
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研究分担者 |
林 和宏 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40725636)
章 忠 広島工業大学, 工学部, 教授 (50254579)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 巨大地震 / 防災拠点建物 / 強震観測 / シミュレーション解析 / 耐震診断 / センシング / ひび割れ検出 / 地震対策支援 |
研究実績の概要 |
地震時には市役所や消防署などの防災拠点施設が確実に機能することが求められる。しかし、近年の地震において、市役所等が被災して機能不全に陥ったケースがあった。そこで、防災拠点施設にIT強震計を設置し、独自開発のシミュレーション技術と組み合わせることで地震後に建物の健全性を即時に診断できるシステムの開発を目指す。すでに複数の市役所や消防署に実装し、試験的な運用を開始しているが、本研究では、構造被害だけでなく建物の機能や室内の安全性を診断できるようにシステムを拡張する。また、スマートフォン・アプリやVR(仮想現実)技術を活用して、建物管理者等に分かりやすく診断結果を伝達する技術を開発する。さらに、これらの研究成果を実装し、全国の防災拠点施設に使えるように普及・展開を図ることを目的とする。 令和1年には、蒲郡市役所、豊川市役所、田原市役所の3施設にIT強震計を設置した。蒲郡市役所と田原市役所には、基礎に1か所、最上階に1か所の計2か所にIT強震計を設置し、データ収録装置を1台設置した。豊川市役所は、免震構造の防災センターの免震層および1階、さらに本館建物の最上階にIT強震計を設置した。シミュレーション技術に関しては、地盤と建物の相互作用ばねを新たに考慮できるように改良を加えた。さらにシミュレーションに用いる建物モデルのパラメータを観測記録から同定する手法として、応答曲面法を用いた手法を開発した。 令和2年には、これまで豊橋技術科学大学内のコンピュータを用いて行っていた耐震診断システムをクラウドコンピュータに移植し、災害時に確実にシステムが機能するようにした。また、建物モデルのパラーメータ同定法として、新たに機械学習のベイズ推定法を導入し、応答曲面法よりも高速かつ高精度であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蒲郡市、田原市および豊川市の協力により、蒲郡市役所、豊川市役所、田原市役所の3つの防災拠点施設へのLAN強震計の設置を行うことができた。これにより、東三河地域のすべての市役所にリアルタイム耐震診断システムが実装されたことになる。また、これまでのシミュレーション技術では、地盤と建物の相互作用を考慮することができなかったが、新たに敷地の地盤構造や杭基礎等を考慮した地盤ばねを建物モデルに組み込むことを可能にしたことで、さらに多様な建物の損傷評価を可能とした。また、観測記録に基づいて、シミュレーション用の建物モデルの構造特性(剛性や減衰など)を最適化する方法として、応答曲面法および機械学習を用いた方法を開発した。これにより、より精度の高い診断を可能とした。さらに、耐震診断システムをクラウドコンピュータに移植し、災害時に確実にシステムが機能するようにした。 以上の理由から研究はおおむね計画通りに順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
東三河地域のすべての市役所にリアルタイム耐震診断システムが実装されたが、さらに奥三河地域の設楽町、東栄町、豊根村にも順次、観測網を広げることで、東三河地域全体の防災力向上を図る。最終年度にあたり、東三河地域防災協議会と連携して、実装されたリアルタイム耐震診断システムの有効活用と維持管理の方針を確立する。また、リアルタイム耐震診断の対象を、防災拠点建物から一般建物に拡大するための方策について検討する。 「建物の機能被害や室内安全の診断方法の開発」では、引き続き、診断結果に建物の安全性に加えて機能性の診断項目を追加する。さらに、撮影した被災時画像をもとに、コンクリートのひび割れや剥落、鉄筋露出等の情報を自動検出し、部材の被災度を自動判定する技術を開発する。
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