研究課題/領域番号 |
19H02228
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
崎野 良比呂 近畿大学, 工学部, 教授 (80273712)
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研究分担者 |
岡本 康寛 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (40304331)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レーザピーニング / 疲労 / 残留応力 / パルス幅 / ハンドヘルドレーザ |
研究実績の概要 |
本年度はまずレーザピーニングの照射条件が残留応力の生成の及ぼす影響を明らかにするためのレーザピーニング装置のセットアップを行った。150mm角のステンレス製水槽の中に試験片を設置し、波長532nm,パルス幅5ns、周波数20HzのNd:YAGパルスレーザを照射した。照射中はフィルタを通した水をかけ流した。また、施工の様子は逐次カメラで観察した。照射後、X線残留応力測定装置で残留応力の深さ方向分布とビッカース硬さ試験機による硬さ分布を測定した。幾つかの改良を経た後、本装置でのレーザピーニングで圧縮残留応力が生成できることが確かめられた。しかしながら、既往の研究よりも圧縮残留応力の大きさが小さい状況であるためさらに装置の改良を進めると共に、パルス幅の検討を行うための改良も進める。 ハンドヘルドレーザによる疲労強度向上効果の確認に関しては、19年度に装置の選定と購入、20年度にセットアップを行い、21年度から疲労強度向上効果の確認を行う予定であったが、研究協力者の分子研佐野PMのご協力により、プロトタイプのハンドヘルドレーザが使用できることになったため、購入をやめそちらを使用する事とした。そこで計画を前倒ししてハンドヘルドレーザによるレーザピーニングの施工を行った。まず、パルスエネルギーを5,10,15mJの3種類、照射径をそれぞれ4種類、他の条件は一定で施工を行い、残留応力の深さ方向分布を測定した。その結果、低出力のハンドヘルドレーザでも圧縮残留応力が生成されることが明らかとなった。そこで、厚さ9mmの鋼板をV開先突合せ溶接したものから切り出した突合せ試験片の溶接部に、パルスエネルギー15mJでは照射径0.37mmでレーザピーニングを施し、疲労試験に供した。その結果、既往の大型レーザを用いた結果と同等の疲労寿命向上効果があることが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レーザピーニングの照射条件が残留応力に及ぼす影響に関する研究に関しては、レーザピーニング施工装置のセットアップが終了したが、既往の研究と同等の残留応力が生成されるように改良が必要であるので、若干予定より遅れている状態である。しかし、施工法が確立すれば遅れは取り戻せると考えている。 ハンドヘルドレーザによる疲労強度向上効果の確認に関しては、19年度に装置の選定と購入、20年度にセットアップを行い、21年度から疲労強度向上効果の確認を行う予定であったが、研究協力者の分子研佐野PMのご協力により、プロトタイプのハンドヘルドレーザが使用できることになったため、すでにパイロット的にレーザピーニングの施工を行った。疲労試験まで行って効果が確認できた。予定よりずいぶん早い進捗である。今後、最適条件の検討や、大型疲労試験での効果確認等順調に進めていけると考えている。 この様に全体としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、新たに組み上げたレーザピーニング施工装置の改良を行い、残留応力が既往の研究並みに生成される環境を整える。その上で、パルス径が残留応力に及ぼす影響を明らかにする実験を行う。本研究で使用する供試材として、普通鋼SM490と高張力鋼HT780の2種類の平鋼を用いる。50×50×10mmに加工した試験材にパルス径の異なるレーザでレーザピーニングを施工する。照射時の様子をカメラで観察しながら、施工時にどの様な現象が起こっているのかについても観察を行う。また、組み上げたレーザピーニング施工装置がパルス幅の異なるレーザにも対応が出来る様準備を行い、パルス幅が残留応力の生成に及ぼす影響を明らかにする。これらの試験片の表面残留応力と残留応力の深さ方向分布の測定を行う。測定にはX線残留応力測定装置と電解研磨装置を用いる。 さらに、現在実用化が進んでいるハンドヘルドレーザを構造用鋼に使用した場合の最適な施工条件の選定と効果確認を行う。使用鋼材は、普通鋼SM490と橋梁用高張力鋼SBHSおよび建築構造用高張力鋼H-SA700とする。これらに照射径と照射密度を変えてレーザピーニングを施し、残留応力測定によりどの条件が最も大きく深い残留応力が生成されるかを比較検討することで施工条件の選定を行う。その後、高張力鋼の小型突合せ溶接試験体に選定した条件でレーザピーニング施工を行い、引張疲労試験に供するこれらの実験により、ハンドヘルドレーザによるレーザピーニングの効果を定性的に明らかにする。 その後、リブ回し溶接試験体にレーザピーニングを施し、曲げ疲労試験を行い超小型ハンドヘルドレーザによる疲労強度向上効果の定量的把握を行う。 これらの研究が終了すれば、LP装置と位置決め装置、ノズル式レーザヘッド、水の供給装置等をシステム化することにより、実際に大型鋼構造物に適用・実用化できる(申請範囲外)。
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