今年度は、レーザピーニングの施工条件のうち、オーバーラップ率が生成される残留応力に及ぼす影響について検討を行った。スポット径により程度は異なるものの,オーバーラップ率が大きくなるほど表面残留応力と最大圧縮残留応力は大きくなり,生成深さも深くなる傾向が見られた。しかし、スポット径が小さい場合、オーバーラップ率を大きくしすぎると表面残留応力と最大圧縮残留応力は低下する傾向がみられた。 また、パルス幅が残留応力に及ぼす影響を明らかにするために残留応力測定を行った。パルス幅は0.2 ps,1 ps,10psの3条件に変化させ、他の条件は一定とした。いずれの条件でも圧縮残留応力は生成されていたが,表面残留応力は引張となっていた。しかし,内部の残留応力は圧縮となっており,パルス幅1 psが最も大きく,次にパルス幅0.2 ps,パルス幅10 psの順で大きかった。ナノ秒パルスレーザの時に比べると,最大圧縮残留応力が小さく、表面から20マイクロミリより深くには圧縮残留応力が生成されていなかった。パルス幅1psよりピークパワーの大きなパルス幅0.2 psの残留応力が小さい要因としては,レーザピーニング時に材料方面がレーザのエネルギーによって除去される除去深さの影響が考えられる。 疲労試験機で死荷重をかけたままレーザピーニングを施す検討も行い、改善点等を抽出した。効果確認は今後の課題である。 さらに、疲労強度向上効果の検討を行うため、いくつかの施工パラメータの試験体で疲労試験を行った。レーザピーニングあるとなしで比較するとほとんどの試験体で疲労寿命の向上が見られた。よって、レーザピーニングによる疲労強度向上効果を確認できた。最大圧縮残留応力の値が疲労試験に及ぼす影響について検討したところ、試験体によってその効果にばらつきがあるが、最大残留応力が大きくなると疲労強度も大きくなる傾向があった。
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