研究課題/領域番号 |
19H02230
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西村 聡 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (70470127)
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研究分担者 |
桑野 玲子 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (80312974)
大坪 正英 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (80804103)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地盤工学 / 室内土質試験 / 地盤材料 / 力学特性 |
研究実績の概要 |
本研究は非貫入(NI)・非接触(NC)型計測に基づく新世代の地盤材料変形試験システムを構築し、研究・実務への適用性・有用性を、実験的・解析的研究により示すことを目的としており、ここまでの2年は上記システムの基本要素となる個々の技術の開発と改善を行った。土質試験は、動的応答解析に用いる微小ひずみ剛性、掘削等に伴う地盤変形予測に用いる中ひずみ域変形特性、そして崩壊予測や地盤沈下解析に用いる大ひずみ域変形特性の把握と目的をわけて実施されることが多いが、これらを一つのパッケージとしての統合できる試験法開発のため、試験装置内外での物理的な干渉がない、あるいは少ないディスク型振動素子による微小ひずみ剛性計測、また画像相関法・三次元ステレオフォトグラメトリーを用いた光学的な小~大ひずみ挙動計測法の三軸試験装置への実装について検討を進めた。ディスク型振動子については、もっぱら砂試料に対してこれまで実証が行われてきたが、今回新たに不均質な細粒土・セメント改良土への適用性を確認するとともに、剛性計測に対する境界条件や周波数の影響を詳細に検証した。光学的計測については2020年度に各段の進展を見ることができ、当初想定したよりも小さな0.001%オーダーの変位を三次元的・フルフィールドで安定的に計測することに成功し、新たに考案したDIC(画像相関法)とPTV(粒子追跡流速法)のハイブリッドアルゴリズムにより、高速で効率的に標点変位を算出するシステムを開発した。粘土試料の三軸圧縮試験に対して上記計測システムを適用し、小ひずみでの剛性同定が可能であることを示すとともに、大ひずみ計測についても高い正確性を有することを示した。また、これらのハードウェアの開発とは別途進めていた、従来の装置において間隙水圧の計測に基づき、土質試料の多方向の剛性計測を飛躍的に簡略化できる技術は実証が終了し論文公開まで完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示したような成果が見られ、それらの論文掲載や会議・ワークショップでの公開も進んでいることから、進捗はおおむね順調であるといえる。コロナウィルスによる移動制限により、打ち合わせの機会となる各種会合が中止・延期となっていることから、研究代表者と研究分担者の間での交流が当初の想定よりも進んでおらず、2019年度後半から2020年度はそれぞれのグループで独自に要素技術の研究・開発を進めることに注力した。しかし、光学的計測手法の想定以上の進捗はその功名ともいえ、2021年度に互いの研究グル―プ訪問が可能になれば、それぞれ開発した技術(ディスク型振動子の適切な非貫入実装法と運用法およびDIC-PTVハイブリッドステレオフォトグラメトリー法による非接触変形計測)の統合により、研究開始当初の目標とする新世代土質試験ツールのパッケージ完成に向けて研究が加速すると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は研究3カ年の最終年度にあたる。これまでに、ディスク型振動素子を用いた新しい微小ひずみ剛性計測システムおよび画像相関-粒子追跡流速ハイブリッド法ステレオフォトグラメトリーを用いた小~大ひずみ挙動計測法の開発が進んでおり、両者とも、ほぼハードウェアとしての実装手段やデータ分析・処理原理の検討については完了に近いところまで進んでいる。最終年度は、これら個々の技術に残された検証事項、特に多様な土質への適用性の検討を進めるとともに、データ処理ソフトウェアのユーティリティ性向上にさらに務め、民間試験室等への導入を推進するために実用性の高いパッケージとして大成することを目指す。 具体的なタスクとしては、以下を計画している:(1)粘性土・砂質土に対して適用性がこれまで確認されたディスク型振動子について、より大きな不均質性を有する固化破砕土への適用性を確認する。これまで砕石等の非常に粒径の大きいな土質に対しては振動がうまく伝播しない等の問題を経験しており、さらに適用可能な土質について調査を進める(研究代表者)、(2)個別要素法解析等による(1)の力学的メカニズムの調査を行う(研究分担者)、(3)三軸圧縮試験・中空ねじり試験等の圧力セルを用いた土質試験に対応可能な、光線屈折補正を適用した三次元ステレオフォトグラメトリーによる高精度な変形定量化手法の確立(研究代表者)、(4)それによる、非貫入・非接触型センシングのみに基づく土試料の微小ひずみから大ひずみまでの一貫した変形計測、(5)上記技術の簡易マニュアルとデータ処理ソフトウェア公開、(6)本研究の先の展望への足掛かりとして、画像解析のリアルタイム化への挑戦の開始 成果の公表と社会への還元手段として、論文執筆に加え、国際地盤工学会および日本の地盤工学会の技術委員会TC101や各種ワークショップにてさらに情報公開していく。
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