研究課題/領域番号 |
19H02234
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
早野 公敏 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (40302632)
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研究分担者 |
石川 達也 北海道大学, 工学研究院, 教授 (60359479)
桃谷 尚嗣 公益財団法人鉄道総合技術研究所, 軌道技術研究部, 上席研究員GL (60425973)
中村 貴久 公益財団法人鉄道総合技術研究所, 軌道技術研究部, 主任研究員 (80425975)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 交通地盤構造物 / 道床材・路盤材 / 破砕・細粒化 / 維持管理 |
研究実績の概要 |
鉄道・道路施設では道床材,路盤材として砕石を主体とする粗粒材を広く使用している.これまでの研究で敷設後20年以上のバラスト軌道,供用30年以上のアスファルト舗装において交通荷重の繰返しによる破砕・細粒化が生じている.細粒化が進行すると雨水浸透に伴う沈下が頻発しさらには脱線や陥没のリスクが高まる.近年では降雨特徴の変化により突発的に変状が生じるケースが増加し,これらの予防や維持管理コストの最小化のためには道床・路盤材の交換や改良のタイミングの適切な判断が重要となる.また,災害後の早期復旧に破砕・細粒化が生じた道床・路盤材の再利用を求める場合もある.しかし現状では細粒化後の供用性予測の不確実性は高く,降雨後に沈下が頻発する現象や災害発生などに基づいて事後に経験的に判断することが多い.そこで本研究では破砕・細粒化した道床・路盤材の雨水浸透に伴う沈下特性や支持力特性を解明し,交換や改良の適切なタイミング・効果を科学的に評価できる新たな維持管理体系を構築することを行った. 具体的に2019年度は,室内要素試験および室内模型実験を主として実施し,経年劣化による細粒分増加が道床材の締固め特性,透水特性,繰返し変形特性,支持力特性に及ぼす影響を調査した.まず,経年劣化により破砕・細粒化した道床材の締固め試験を行い,細粒化の程度による締固め曲線の違いを明らかにした.次に道床材の透水性・繰返し変形特性に与える道床材細粒化の影響を透水試験・三軸試験により評価した.続いて室内模型実験により道床の支持力特性に破砕・細粒化が及ぼす影響を調べ,室内要素試験結果による評価結果との整合性について検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は本研究の1年目であり,破砕・細粒化が道床材の物性に及ぼす影響について基礎的な調査を行った.具体的には,室内要素試験および室内模型実験を主として実施し,経年劣化による細粒分増加が道床材の締固め特性,透水特性,繰返し変形特性,支持力特性に及ぼす影響を調査した.まず,経年劣化により破砕・細粒化した道床材の締固め試験を行い,細粒化の程度による締固め曲線の違いを明らかにした.次に経年劣化した道床材の透水性・繰返し変形特性に与える細粒化の影響を透水試験・三軸試験により評価した.続いて室内模型実験により道床の支持力特性に破砕・細粒化が及ぼす影響を調べ,室内要素試験結果による評価結果との整合性について検討を行った. 以上のように,道床材を対象に研究データを蓄積するために必要な各種試験を実施できたこと,また各試験から経年劣化に伴う破砕・細粒化が道床材の物性に及ぼす影響について基礎的なデータを幅広く得られたことから,おおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
粗粒材の破砕・細粒化のプロセスでは細粒分の増加とともに,粒子形状の変化も生じる.破砕・細粒化とともに稜角に富む砕石が丸くなるため粒子形状は大きく変化し,力学特性に大きな影響を及ぼすと予想できる.しかし現在,粒子形状の変化を無視し粒度のみがそろうように調整して実験などで評価している.そこで今後は経年劣化による細粒分増加だけではなく粒子形状変化が締固め特性や繰返し変形特性に及ぼす影響を明らかにし,それらの影響を考慮した新たな維持管理指標を提案する予定である. また,一般に道床材に対しては乾燥状態,路盤材に対しては最適含水比における強度変形特性を調査して供用性曲線を推定している.しかし破砕・細粒化した道床・路盤材の沈下傾向は,維持から雨水浸透時にいたる飽和度変化時の繰返し変形特性に依存する.そこで今後は飽和度変化時の繰返し変形特性に破砕・細粒化の程度が及ぼす影響を明らかにし,飽和度に着目した室内試験結果を維持管理分野に適用することを試みる.破砕・細粒化した道床・路盤材の精緻な室内材料試験結果に基づき,道床・路盤材が経年劣化した軌道・舗装の変形・沈下量を予測可能な解析ツールを開発して,LCCの算定が可能な寿命予測手法を確立する. さらに道床・路盤材を交換せずに改良する方法としてアスファルトやセメントで細粒化した道床・路盤材を結合する工法を用いる場合がある.この工法は強度剛性が増加して沈下を抑制できるが,固結させるため沈下に対する追従性や排水性を重視する場合には適用できない.そこで従来の改良が困難なケースに対して適用可能な新しい改良方法として造粒による粗粒化を試みる.粗粒化後の沈下特性を予測する方法を示し,細粒化した道床・路盤材の造粒による新しい改良方法を開発する予定である.
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