研究課題/領域番号 |
19H02246
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
相馬 一義 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40452320)
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研究分担者 |
古屋 貴彦 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (00770835)
宮本 崇 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (30637989)
馬籠 純 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (70377597)
石平 博 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (80293439)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 深層学習 / 機械学習 / 数値気象モデル / 降雨予測 |
研究実績の概要 |
研究代表者らは,数値気象モデルCReSiBUCによる数時間から1日先予測結果を入力し,深層畳み込みニューラルネットワーク(視神経を模したニューラルネットワーク)を用いて降水量分布を補正する豪雨予測手法を構築・改良してきた. 2020年度には,数値気象モデルによる降水量予測補正に,複数のショートカット接続を持つ深層畳み込みニューラルネットワーク(U-Net)を導入した.U-Netは畳み込み演算を行う層であるエンコーダ部と,逆畳み込み演算を行う層であるデコーダ部に分かれ,ショートカット接続はエンコーダの各層での出力をデコーダの対応する各層に伝達する. 2001年8月の京阪神地域における数値気象モデルの降水量と地上鉛直風速の出力を学習用,検証用に分割してこれまで申請者らが用いてきた深層畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とU-Netに入力し,気象庁解析雨量と比較・検証した.深層学習手法をU-Netに変更した場合には,CNNと比較して特に台風に伴う降水事例のような,空間スケールの大きい(一つの降水域が直径数十km程度の範囲)降水では,補正によって周囲よりも降水強度が大きな領域(5mm/hr,10mm/hr以上)を表現可能になり,スレットスコアを用いた定量的な検討でもそれが示された.これは,畳み込み層・逆畳み込み層を経由して単純化された降水量分布の特徴に関する情報と,ショートカット接続を経由した空間解像度の高い情報が,U-Netによって重ねあわされた結果と考えられる. このことから,数値気象モデルの降水量補正に深層学習手法(U-Net)を活用することにより,減災で重要となる強雨域の予測を改善できる可能性が示唆された.しかし局所的な降水の事例(一つの降水域が直径数km程度の範囲)では,いまだ降水強度を平滑化する傾向が見られ,さらなる改善が必要と考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数値気象モデルと深層学習を融合した豪雨予測手法の構築という本研究課題の目標に対し,研究実績の概要に挙げたように以下の進捗が見られたため,おおむね順調に進展していると判断した. 2020年度には,数値気象モデルによる降水量予測補正に,複数のショートカット接続を持つ深層畳み込みニューラルネットワーク(U-Net)を導入した.U-Netは畳み込み演算を行う層であるエンコーダ部と,逆畳み込み演算を行う層であるデコーダ部に分かれ,ショートカット接続はエンコーダの各層での出力をデコーダの対応する各層に伝達する. 2001年8月の京阪神地域における数値気象モデルの降水量と地上鉛直風速の出力を学習用,検証用に分割してこれまで申請者らが用いてきた深層畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とU-Netに入力し,気象庁解析雨量と比較・検証した.深層学習手法をU-Netに変更した場合には,CNNと比較して特に台風に伴う降水事例のような,空間スケールの大きい(一つの降水域が直径数十km程度の範囲)降水では,補正によって周囲よりも降水強度が大きな領域(5mm/hr,10mm/hr以上)を表現可能になり,スレットスコアを用いた定量的な検討でもそれが示された.これは,畳み込み層・逆畳み込み層を経由して単純化された降水量分布の特徴に関する情報と,ショートカット接続を経由した空間解像度の高い情報が,U-Netによって重ねあわされた結果と考えられる. このことから,数値気象モデルの降水量補正に深層学習手法(U-Net)を活用することにより,減災で重要となる強雨域の予測を改善できる可能性が示唆された.しかし局所的な降水の事例(一つの降水域が直径数km程度の範囲)では,いまだ降水強度を平滑化する傾向が見られ,さらなる改善が必要と考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度には,より多数のデータを学習・検証に用いた検討を行う予定である.具体的には,数値気象モデルCReSiBUCを用いて2001年8月及び2011年8~9月を対象とした京阪神地域における予測実験を行い,学習・検証過程に用いるデータ数を増やす.2011年8~9月には台風・前線・局地的大雨に伴う降水が発生しており,開発した手法の精度を降水タイプ別に評価する. また,これまでの手法でみられた降水強度出力が平滑化される問題についてさらなる改良を試みる.そのためには数値気象モデルによる降水量・地上鉛直風速予測結果のみならず,局地的な降水のメカニズムに基づいた入力要素のさらなる追加が必要であると考えられる.そのため,降水の発生・発達に影響を与える地上付近の水蒸気と大気の安定度,降水が発生する位置に影響を与える水平風速に関する情報を追加した検討を行う.加えて,より適切なハイパーパラメータ及び損失関数についてもさらなる検討を行う. 検証に当たっては,気象庁解析雨量・全国合成レーダーによる降水量観測値を真値として,数値気象モデル出力と比較して降水量予測精度が向上しているか検証する.比較に際してはまず,閾値を超える降水の分布を予測できるか検討する.具体的にはスレットスコア(観測・予測とも降水有のメッシュ数/観測・予測とも降水無しのメッシュを除いたメッシュ総数),見逃し率(観測で降水有・予測で降水無のメッシュ数/メッシュ総数),空振り率(観測で降水無し・予測で降水有のメッシュ数/メッシュ総数)を算出し,予測精度を定量的に評価する. 以上の成果を取りまとめ,地球環境論文集に投稿する予定である.
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