研究課題/領域番号 |
19H02248
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐山 敬洋 京都大学, 防災研究所, 准教授 (70402930)
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研究分担者 |
竹林 洋史 京都大学, 防災研究所, 准教授 (70325249)
寶 馨 京都大学, 総合生存学館, 教授 (80144327)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 洪水予測 / 水文モデル / 降雨流出特性 / 河道地形 / RRIモデル / 土壌 / 地質 |
研究実績の概要 |
本研究は、観測水位の無い中小河川も含めて、日本全国の洪水を統一的に予測する技術を開発する。2020年度は、研究実施計画に基づいて、以下の二つの項目について研究を実施した。 1)土壌マップ、地質マップを反映した全国版RRIモデルのパラメータ同定法を提案した。この推定手法は、まず全国約120の国交省・水機構管理のダムを対象に、土壌と地質分布の占有率に応じてダム流域を階層的クラスタリングによって分類する。一方、事前に用意した40組のモデルパラメータセットも流出計算の結果に応じて階層的クラスタリングで分類する。流域、パラメータセットのグループに応じた対応表を作成し、どのグループの流域で、どのグループのパラメータセットが適するかを明らかにする。これにより、土壌、地質の区分に応じて妥当なパラメータセットを選択することができる。そのうえで、最初に用意した全国の土壌マップ、地質マップに対応した全国版RRIモデルのパラメータ分布を推定し、デフォルト設定の結果や各ダムで準最適化した結果(40組のうち最も適合したパラメータの結果)と比較した。その結果、上記の手法で選定したパラメータ分布によって準最適化と概ね同等の結果が得られることを確認した。 2)河道の断面推定に関しては、昨年度提案した中小河川の断面推定法の式を全国モデルに適用して検証を進めるとともに、国土交通省が管理する河川区間については、断面情報の提供を受けてRRIモデルに反映する作業を進めた。それにより、断面情報を反映した場所で特に水位の予測精度が向上することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パラメータ同定については、昨年度提案した手法を改良することによって、全国版RRIモデルのパラメータの第一推定を実現した。この方法をさらに改良することによって、当初予定していたベイズ推定に基づいてパラメータを更新する形式に発展できる目途が立っており、順調に研究が進んでいるものと判断している。また、全国版RRIモデルを用いたアンサンブル洪水予測への適用事例として、平成30年7月豪雨、令和元年東日本台風を対象にした予測実験の検証を国際誌で論文発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度考案した階層的クラスタリングに基づくパラメータの同定法をさらに改良して、新しい出水イベントで計算を実施することで、推定パラメータを逐次更新する方法を考案する。また、全国の多数の地点で計測されている流量、水位の情報をもとに、全国版RRIモデルの精度を検証して、その特性を統計指標で明示する。さらに、今年度の研究で全国版RRIモデルに反映した河道断面の情報を分析することによって、流出特性と流下能力の関係等を明らかにして、モデルに直接反映することができない中小河川の断面形状(幅や深さ)を推定する。これらの検討を進めることで、本研究の目標である全国を対象にした洪水予測の実現を目指す。
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