研究課題/領域番号 |
19H02252
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
重松 孝昌 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (80206086)
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研究分担者 |
中條 壮大 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20590871)
大友 涼子 関西大学, システム理工学部, 助教 (00726862)
麓 隆行 近畿大学, 理工学部, 教授 (30315981)
竹原 幸生 近畿大学, 理工学部, 教授 (50216933)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多孔質体 / ポロシティ / アスペクト比 / 屈折率整合法 / 透水試験 / Stokes流れ / 流体力学的拡散 / Immersed Boundary Method |
研究実績の概要 |
低ポロシティ多孔質体の流動特性については,2019年に検討したアスペクト比の異なる砕石を用いた舗装試験板の透水評価結果を受けて,実寸法サイズに基づくアクリル樹脂楕円体を立方最密充填状に積み上げた模擬多孔質体を作成した.そして,屈折率整合法を用いて内部の流れの可視化を試みた.模擬多孔質体と専用の透水試験装置を新規に作成し,透水で使用する溶液の屈折率の調整を進めた. 一方,これまで境界壁面に接するような条件では計算を行うことができなかったImmmersed Boundary Methodを改良して,壁面に物体が接する場合や,壁面を物体が横切るような場合にも計算が可能となるようにした.これによって周期境界条件を導入することが可能となり,真に無限に続く多孔質構造物の一部を抜き出した計算が行えるようになった.また,圧力そのものを変数とするのではなく,圧力を密度で除した(p/ρ)を変数として計算を行うことにより,気液界面を簡易に計算できるようにするとともに,気液界面におけるImmmersed Boundary Method の計算に要する時間を短縮するに至った.さらに,計算手法の妥当性の検証を行うため,楕円体で構成される多孔質体を3Dプリンターで製作した.この際,楕円体の迎角を変化させて管水路内で多孔質体を構成できるよう工夫を施した. 低レイノルズ数条件で,高ポロシティの粒子層中における微粒子懸濁液の移動特性を実験および数値解析により調べた.実験では円柱形状の障害物を複数配置したマイクロ流路を自作した.円柱の配置が異なる数種類の流路内に微粒子懸濁液を流し,微粒子の拡がり挙動への影響を評価した.数値解析では,疎密構造をもつ粒子層中を透過する微粒子の挙動を求め,疎密部分の体積率の差によって微粒子の拡がりが促進または抑制されることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低ポロシティ多孔質体を対象とした超複雑コネクティビティ研究においては,多孔質体に使用したシリコン樹脂楕円体550個を作成し,一辺95mmほどの立方最密充填状態に積み上げて作成し,透水試験器を試作するまでには至った.しかし,コロナ禍で実験の実働を十分に進めることができず,屈折率整合法での溶液濃度を調整するにあたり,十分に調整するに至らなかった.一方,多孔質体を対象としたImmersed Boundary Methodへの周期境界条件の導入,および,水面追跡法の改善を行い,多様な条件下における数値解析を可能とするにまで至った.また,これらの検証を行うため,多様な多孔質体条件による管水路内実験ができるよう3Dプリンターで模型制作を行えるようになった. 高ポロシティ多孔質体を対象とした研究においては,2019年度に実施した空隙構造・コネクティビティの評価方法の有効性を,任意の内部構造をもつマイクロ流路を自作し手実験を実施して実験結果と数値計算結果の比較により再検証する予定であった.マイクロ流路の作製は達成したが,流路に微粒子懸濁液を注入する機構に課題があることを見出し,実験結果と数値解析とを直接比較するには至っていない.数値解析に関しては概ね順調に進めることができており,実験条件を制御することができ実験結果が得られれば,数値解析結果との比較はできる準備が整っている. 以上を総合して,概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
低ポロシティ多孔質体を対象とした超複雑コネクティビティ研究においては,多孔質体寸法と屈折率調整法の関係を早急に検討し,可視化実験を進める.調整の後,同じ樹脂で粒子のアスペクト比を変えて実空隙径での空隙内の流れを可視化する.この実験により,実粒子形状での流れの特徴を把握し,スケールとの関係を調べたい.一方,Immersed Boundary Method を用いた数値計算では,多孔質体を構成する楕円体の設置姿勢を変化させた実験を行って空隙構造による流況の相違を明らかにするとともに,この実験結果と計算結果を比較する.同時に,乱流モデルの導入についても検討する. 高ポロシティ多孔質体を対象とした研究においては,数値計算結果との比較ができるように実験方法に改良を加え,空隙構造・コネクティビティの評価方法の有効性を検証する.その上で,実験で用いた障害物が存在する流路および数値解析で対象とした粗密構造をもつ粒子層の内部の空隙構造をボロノイ解析等で定量的に評価し,2020年度に明らかとなった内部の微粒子の移動特性との関係をまとめることを目標とする.
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