研究課題/領域番号 |
19H02269
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
白崎 伸隆 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (60604692)
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研究分担者 |
松井 佳彦 北海道大学, 工学研究院, 教授 (00173790)
松下 拓 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (30283401)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 病原ウイルス / 遺伝的多様性 / ウイルス様粒子 / 水道原水 / 生残性 / 感染性評価手法 / プラック形成法 / Viability-PCR法 |
研究実績の概要 |
本研究では,水道原水中の病原ウイルスの遺伝的多様性を把握すると共に,培養困難なノロウイルスについて,複数の遺伝子型・株のノロウイルスのウイルス様粒子(VLPs)を人工的に作製し,VLPsの高感度定量法と併用することにより,遺伝子型,更には株の差異にまで踏み込んだノロウイルスの物理的な浄水処理性を,培養法に頼ることなく詳細に評価することを目的とした.また,培養可能な病原ウイルスについて,宿主細胞を用いた培養・定量法を活用することにより,水道原水中から複数の遺伝子型・株の野生株を単離し,これらを消毒処理実験に供することにより,水道原水中の消毒耐性株の存在を明らかにすると共に,遺伝子型間・株間の浄水処理性の差異を詳細に評価することを目的とした. 今年度は,全国の複数の水道原水における病原ウイルスの存在実態調査を実施し,PCR法による定量に加えて,Viability-PCR法,並びに代表的な感染性評価手法であるプラック形成法による定量を実施した.対象とした水道原水においては,感染性胃腸炎の流行期とされる冬季において,ノロウイルスGII,エンテロウイルス(高い塩素耐性を有するコクサッキーウイルスを含む)が高濃度で存在していることが明らかとなった.また,ノロウイルスGIIについては,Viability-PCR法による定量結果から,感染性を有した状態で存在している可能性が示唆された.一方,エンテロウイルスについては,Viability-PCR法及びプラック形成法による定量結果に加え,水道原水を用いた添加試験(生残性評価試験)の結果から,不活化した状態で存在して可能性が示唆された.培養困難なノロウイルスのVLPsの作製については,内部に封入する人工合成遺伝子を複数種作製し,遺伝子が封入されたVLPsを分離・精製するための密度勾配遠心条件を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,全国の複数の水道原水における病原ウイルスの存在実態を調査すると共に,感染性の有無についても議論を展開できた.また,遺伝子封入VLPs作製に向けた準備・検討にも着手できたことから,研究計画は概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,培養可能な病原ウイルス,特に,エンテロウイルスが検出された水道原水から複数種の野生株を単離・同定し,浄水処理実験に用いることを目指す.また,遺伝子封入VLPsの作製においては,封入する遺伝子の種類・長さを最適化し,封入効率の高い遺伝子を明らかにする.
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