研究課題/領域番号 |
19H02284
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
楠原 文雄 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50361522)
|
研究分担者 |
岸田 慎司 芝浦工業大学, 建築学部, 教授 (10322348)
高橋 典之 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60401270)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 柱梁接合部 / 接合部降伏 / 損傷 / 残存耐震性能 |
研究実績の概要 |
事前に損傷度ⅡおよびⅣ程度となるように加力した柱梁接合部を含む十字形部分架構の水平加力実験を実施した。すでに経験した変形の範囲では損傷の影響で剛性・耐力が著しく低下し,一方で新たに経験する変形域では耐震性能に事前損傷の影響はほとんどないことを明らかにした。また,梁にヒンジリロケーションを用いた柱梁接合部において,接合部横補強筋や梁主筋の配筋方法および柱の軸力変動の影響を実験変数とし,平面十字形及びト形柱梁部分架構4体の載荷実験を行い,接合部横補強筋量,主筋の配筋方法の違い及び変動軸力によって破壊性状に違いがでることが明確となった。 柱梁接合部の非線形挙動をマクロエレメントによりモデル化した骨組の地震応答解析では,一部の柱梁接合部で接合部降伏が生じる場合について,接合部降伏が生じる柱梁接合部の高さ方向の分布が地震時応答および骨組の崩壊荷重に及ぼす影響を地震応答解析により検討した。まれに発生する地震動において接合部降伏する柱梁接合部の位置の影響はなく,極めてまれに発生する地震動の0.5倍の地震動から接合部降伏する柱梁接合部の位置の影響がみられた。極めてまれに発生する地震動では接合部降伏する柱梁接合部が複数存在するとその間で部分崩壊形が形成される。崩壊荷重は接合部降伏する柱梁接合部が下層にあるほど小さくなる傾向がみられた。 さらに,損傷評価について,柱梁接合部における目視可能な損傷は,直交梁の取りついていない外構面に発生するものであり,外部環境に面した状態または大規模な吹き抜け空間に面した状態で損傷を観察することになる。そこで,地震ひび割れを(ドローン等を用いて)画像計測するために必要な撮影環境条件を明らかにした。また,画像計測の精度に関する解析的検討をあわせて実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に柱梁接合部を含む部分架構の水平加力実験の加力フレームおよび載荷方法を再検討し,加力フレームおよび試験体を再設計したため,実験実施全体が遅れているが,2年目はおおむね順調に実施できた。地震応答解析による柱梁接合部が損傷した骨組の耐震性能の検討はおおむね順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
1) ト形接合部について柱梁強度比が1に近く典型的な接合部降伏破壊が生じる試験体について,損傷と柱梁接合部の構造性能の低下の関係を把握する水平加力実験を行い,損傷度と耐震性能の関係を把握する。 2) 引き続き,接合部降伏破壊を含む柱梁接合部の非線形挙動を表すことができる柱梁接合部のマクロエレメントを用いた地震応答解析を系統的に行い,柱梁接合部が損傷した後の骨組の崩壊余裕度を明らかにする。具体的には,無限均等ラーメンを対象とした地震応答解析プログラムを一般的な平面骨組に適用できるように拡張したプログラムを用いて,変動軸力が大きい骨組外端の柱梁接合部の影響を検討する。IDA(Incremental Dynamic Analysis)を用いて,崩壊余裕度や使用限界,修復限界,安全限界といった骨組の構造性能に対する上記因子の感度を検討する。 3) 水平加力実験により得られた損傷度と柱梁接合部の構造性能の関係,地震応答解析により得られた柱梁接合部の損傷と骨組の耐震性能の関係を総合し,柱梁接合部の損傷を考慮した骨組の性能評価法を検討する。
|