研究課題/領域番号 |
19H02285
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
花里 利一 三重大学, 工学研究科, 教授 (60134285)
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研究分担者 |
上北 恭史 筑波大学, 芸術系, 教授 (00232736)
山口 謙太郎 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (10274490)
中川 貴文 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (60414968)
新津 靖 東京電機大学, システムデザイン工学部, 教授 (70143659)
遠藤 洋平 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (90772864)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 文化財建造物 / 組積造 / 地震 / 被害 / 保存修復 |
研究実績の概要 |
国内外の組積造建造物の耐震実験研究に関する文献調査に基づいてデータベースの作成・整備を行った。国内の歴史的組積造建造物の耐震調査では、2011年東日本大震災、2016年熊本地震、2018年胆振東部地震で被災した歴史的組積造建造物の調査を行った。具体的な調査対象は福島市有形文化財福島市写真美術館、国登録有形文化財PSオランジュリ、安平町指定有形文化財小林倉庫であり、保存修理事業が実施された写真美術館とPSオランジュリについては、常時微動測定により耐震補強効果を確認するとともに、地盤・建物の動的相互作用効果に関する知見を得た。さらに、国指定重要文化財旧田中邸の煉瓦造洋館では地震モニタリングを実施し、地震時の地盤・建物の動的相互作用効果を確認した。また、木骨石造建造物として被災した小林倉庫では、建築遺産の保全に関する課題を明らかににするとともに、石造壁と木軸組の変形性能に関する知見を得た。国内の歴史的組積造建造物の調査では、以上の建築物に加えて、小樽市歴史的建築物の旧小樽倉庫の微動測定と地震モニタリングを実施した。外国の歴史的組積造建造物の地震モニタリングでは、ギリシャ・パルテノン神殿において、震度Ⅴレベルの強震動記録を得た。この地震記録により、強震時に組積構造の地震応答特性に幾何学的な非線形挙動がみられることがわかった。以上のように、本年度は歴史的組積造建造物の耐震性に関わる変形性能と動的相互作用効果に関する実構造物でのデータと基礎的な知見を得た。また、組積造試験体の強度試験においてひずみ分布を精度よく測定するための画像計測技術を開発した。さらに、次年度に計画しているアテネ工大での模型組積造建造物を用いた実験計画を立案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の研究を進める上で、歴史的組積造建造物の実際の挙動を把握することは基本的に重要である。本年度は、近年の地震で被災した建造物も含めて、常時微動測定および地震モニタリングを行い、国内外の歴史的組積造建造物の耐震性に関わるデータを収集している。とくに、2019年7月19日にギリシャ・パルテノン神殿では初めて強震動記録を得ている。また、次年度にアテネ工大で計画している模型構造物を用いた耐震実験計画を立案し、アテネ工大との研究協力体制を確認している。ただし、2020年2月以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、外国での調査が困難になり、国内においても出張制限を受け、現地調査等に影響を受けており、研究活動にやや支障が出ている。
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今後の研究の推進方策 |
文献調査に基づく歴史的組積造建造物の耐震研究データベースについて、引き続きデータを収集し、変形性能と動的相互作用効果に関す知見を得る。国内外の歴史的組積造建造物の地震モニタリングを引き続き実施し、実挙動に関するデータを蓄積し、実挙動記録の解析を進める方針である。地震記録、常時微動記録に基づいて、解析的な検討も加えつつ、歴史的組積造建造物の変形性能、地盤・建物の動的相互作用に関する知見を得る方針である。次年度には、アテネ工大において、大変形時の挙動を明らかにするために、模型組積造構造物の耐震実験(静的加力実験、振動台実験)を行う計画であるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける場合には、政府の方針等に従って研究を進める。
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