研究課題/領域番号 |
19H02292
|
研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
辻 聖晃 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (00243121)
|
研究分担者 |
北尾 聡子 大阪電気通信大学, 工学部, 准教授 (40273552)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | オイルダンパー / 応答逆転現象 / ダンパー取付部の損傷 / 時刻歴応答解析 / 極限応答増幅率 |
研究実績の概要 |
制震構造建物や免震構造建物に組み込まれるダンパーおよびその取付部材が,地震や台風などの外乱作用中に損傷したとき,損傷が生じない場合に比べて最大応答が増幅する現象(応答増幅現象)や,ダンパーを設置していない場合に比べて最大応答が増幅する現象(応答逆転現象)について,2020年度は下記の研究を実施した. ①履歴型ダンパーを使用した場合のダンパーの損傷として,ダンパーあるいは取付部材の破断ならびに取付部材の座屈を想定し,応答増幅現象および応答逆転現象の発生の有無について数値解析による検討を行った.前者の損傷については,地震動作用中の任意の時間に発生する可能性があるとして,損傷の発生時間を連続的に変化させながら時刻歴応答解析を実施したところ,破断のタイミングによって,応答逆転現象が生じる場合があることが明らかとなった.一方,ダンパーや取付部材に破断が生じず,取付部材の座屈のみが生じる場合には,応答増幅現象は見られたものの,応答逆転現象が観察されたケースはなかった.これは,著者が先行研究ですでに明らかにしていた,ダンパーとして粘性系のダンパーを用いた場合と同様の結果であり,応答逆転現象がダンパーが組み込まれた建物一般に生じうる現象であることを明らかにした. ②本研究費で導入した小型振動台を使用して,オイルダンパーを組み込んだ2層建物モデルに対する地震動入力実験を実施した.オイルダンパーのストロークオーバーを再現するため,オイルダンパーのピストンロッド部に円筒を挿入して,ストロークが十分な場合と十分ではなくストロークオーバーが生じる場合との比較実験を実施した.その結果,ストロークが短く,地震動入力時の早期にストロークオーバーが生じるようなケースにおいて,応答逆転現象が生じることが示された.このことはすでに著者が先行研究で明らかにしており,これを実験においても実証したことになる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では,ダンパーに損傷が生じた場合でも,応答逆転現象が生じないような「フェールセーフ機構」の提案と,その有効性の検証を実施する予定であったが,2020年度はこの検討ができなかった.また,コロナ対応によって,研究成果を十分に吟味し,取りまとめることができず,発表成果にまとめることができなかった.この意味で「やや遅れている」と評価する.
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度は最終年度であるので,検討結果の蓄積と取りまとめに尽力する.また,前年度に実施できなかった「フェールセーフ機構」についての検討と検証を行う.
|