本研究は、室内実験と観測事例から地表面付近の竜巻による気流特性を評価し、建築物への竜巻状気流による作用荷重(竜巻荷重)を検討するものである。まず、近年の国内外での既往研究では地表面付近の竜巻観測結果が報告されていることから、入手可能な文献を通して、地表面粗度の実況と竜巻の構造や気流特性との関係について分析した。具体的には、観測事例の修正ランキン渦モデルへの適合性について、最大風速半径を超える範囲での風速の接線成分のべき指数の検証を行った。例えば、海外の郊外での事例で-0.45~-0.65、国際空港内の事例で地上10mで概ね-1、国内の事例で-0.4又は-0.6とした場合に適合性がよい結果であった。この傾向は(国研)建築研究所所有の竜巻状気流発生装置による気流可視化実験で得た粗度密度とべき指数との関係と概ね整合することを確認した。次に、竜巻状気流発生装置を用いて、装置床面上に千鳥配置した粗度ブロックに作用する抗力特性把握のための風圧実験を行った。各ブロックの各面に風圧測定孔を設け、粗度密度と竜巻状気流のスワール比を変えた12ケースについて測定した。動径、接線方向ともに抗力は、スワール比が大きいほど絶対値が大きくなること、また、旋回流中心からの距離の逆数に概ね比例することを確認した。さらに、非圧縮流体のオイラー方程式の外力項、つまり粗度ブロックから受ける摩擦力等によって気流が受ける力が、粗度ブロックに作用する抗力と釣り合うものと仮定し、上記の定性的な傾向を反映することによって、粗度効果を反映した圧力降下モデルを検討した。手計算で導出可能な簡便なモデル化方針のため、実験での圧力降下性状と異なる部分や適用範囲の検証に今後の課題を残したが、概ね実験結果と整合する算定結果を得ることができた。
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