研究課題/領域番号 |
19H02295
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
前 真之 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (90391599)
|
研究分担者 |
高瀬 幸造 東京理科大学, 理工学部建築学科, 講師 (20739148)
井上 隆 東京理科大学, 理工学部建築学科, 教授 (30151608)
吉澤 望 東京理科大学, 理工学部建築学科, 教授 (40349832)
谷口 景一朗 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (80746496)
二宮 秀與 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (90189340)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 省エネルギー住宅 / 日射制御 / 潜熱蓄熱材 / プライバシー性 / 眺望性 / 開口部 |
研究実績の概要 |
日射・昼光・自然風を開口部から積極的に取得または遮蔽することは、住宅内部の温熱・光環境の改善と暖冷房・照明の省エネルギーにとって非常に有効である。本研究では、冬の暖房負荷の大幅な低減および温熱環境改善のため、日射熱取得に適した開口部の開発および蓄熱材の最適化を行う。次に夏の省エネと住環境改善のため、日射遮熱と自然光利用に優れ、かつ眺望やプライバシーに配慮した日射制御部材を開発する。それに加えて、冬と夏の自然エネルギー利用に適した開口部の設計手法を構築し、各要素を連携させた最適化が可能な設計ツールの提案を行っていく。
H30年度の成果として、熱負荷計算において日射熱利用時の温熱環境および熱負荷削減効果を精度よく検証するために、開口部からの日射取得の詳細を再現するため、窓面積(ガラス面積率)、窓種別、ガラス・フレーム材質・付属物情報等の詳細入力を可能とするプログラムをEESLISMをシミュレーションエンジンとする熱負荷計算ソフトに実装した。次年度以降に、計算精度の検証を予定しており、設計者にとって有益な設計ツールの提案へのつなげていく。 また、東京大学屋上に設置している実大実験棟を用いて、夏期における日射遮蔽物を有する開口部の熱性能および冬期における潜熱蓄熱材の部位ごとの詳細な蓄熱性能の実測を行い、いずれも精度よく実測する手法を確立した。この手法をもって、本研究で今後開発していく開口部・日射制御部材の評価・検証を行っていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30年度の研究によって以下の知見を得たことにより、次年度以降に本研究において開発する開口部・日射制御装置の評価・検証を行う体制を整備した。 1)床および天井に設置した潜熱蓄熱材の部位ごと・時刻ごとの蓄熱性能を評価し、室温および日射熱取得量を考慮した有効な蓄熱材の設置箇所を提案した。また、日射熱取得と蓄熱との組み合わせにより、実大実験棟において冬期でも暖房設備を使用せずに一定室温以上を維持できる可能性を示した。 2)日射遮蔽物として外付けロールスクリーンを設置した開口部の熱性能値(熱貫流率・日射熱取得率)の実測を行い、JISに定める計算値と比較して精度よく実測可能であることを検証した。 3)開口部からの日射取得の詳細を再現するため、窓面積(ガラス面積率)、窓種別、ガラス・フレーム材質・付属物情報等の詳細情報の反映を可能とするシミュレーションプログラムを実装した。 以上の進捗をもって、次年度より本研究で開発した開発した開口部・日射制御部材の評価を行い、設計ツールへの実装を進めていく。
|
今後の研究の推進方策 |
<高日射取得型開口部・日射遮蔽と自然光利用に適した制御部材の開発>冬期南面における日射熱取得を最大化するため、高断熱かつ日射取得率が高いガラスを用いた開口部を試作する。また、夏期東西北面における日射遮蔽・自然光利用のため、日射熱遮蔽と自然光利用を両立した制御部材を開発する。 <開口・制御部材の組合せにおける日射熱・昼光取得の評価方法構築> 様々な開口部における詳細な日射熱・昼光取得のモデル化を行うため、東京理科大学実験棟において、日射熱取得・昼光の分配に関する詳細な計測を実施する。計測には井上研究室開発の日射熱取得率計測装置を改良とともに、開口部メーカーの実大実験装置の利用も検討する。 <昼光利用に適した開口部の光シミュレーションによる設計手法構築> 昼光利用に適した開口部の位置や形状を明らかにするため、直達光および天空輝度分布を考慮した昼光シミュレーションを実施する。また実設計時に適した簡易な昼光利用予測手法を構築する。 <プライバシー・眺望の評価>輝度画像から開口部を通した眺望性・プライバシー性を予測する手法を検証し、開発した評価指標をRadianceなどの光環境シミュレーションに組み込み、設計時に簡易に計算する手法を開発する。 <屋上実験棟における温熱・光環境の実証実験> 実気象下での室内環境を把握するため、東京大学屋上実証棟において、様々な開口部や日射制御部材・蓄熱部材を用いた場合の室内温熱光環境を詳細に把握する。 <日射熱利用時の躯体蓄放熱を考慮した熱負荷計算> 日射熱利用時の温熱環境および熱負荷削減効果を評価するため、開口部からの日射取得の詳細モデルを作成し、蓄熱建材(潜熱蓄熱材を含む)の吸放熱と組み合わせた熱負荷計算エンジンを構築する。試行段階には前研究室開発のExTLA、ツール実装時には宇田川光弘工学院大学名誉教授開発のEESLISMの改修を予定。
|