本研究は、室内温熱環境を対象とし、居住者の温熱環境適応が快適性や知的生産性に与える影響に着目し知見を得ることを目的とした。温熱環境適応の考え方は、空調制御、衣服調整、活動内容による違いなど、生活者の適応行動にかかわるため、得られる知見は、空調設備等の技術的な基礎データとなるとともに、生活者のライフスタイルをより持続可能にするという視点においても親和性が高い。温熱環境適応が知的生産性に与える知見を得るとともに、持続可能なライフスタイルに関する教材開発を行うことを目的とした。 2022年度は、2021年度までにまとめた「温熱環境適応が知的生産性に与える影響に関する被験者実験」の成果や、既往研究の温熱環境適応の観点をもとに、これらの知見を生活者のライフスタイルの立場から検討し、温熱環境と持続可能なライフスタイルに関する教材開発につなげることを目的とした。日常生活における温熱環境適応範囲における省エネ行動をはじめとした代表的な衣生活にかかわるライフスタイルの変容が、どの程度のCO2削減効果があるのかを試算した。温熱環境適応範囲の拡張に関しては、「夏季に冷房設定温度を1℃下げる」および「冬季に暖房設定温度を1℃上げる」を想定し、同時に「衣服を長く大切に使う」「冷水洗濯および自然乾燥」などの行動についても年間のライフサイクルCO2を試算し、これらの行動の有効性を定量的に示した。持続可能なライフスタイルの実現に向け、衣生活や住生活の教育内容を整理、検討し、あらためて家庭科教育の位置づけについて論じた。2021年度に論文発表した「温熱環境適応が知的生産性に与える影響に関する被験者実験」の結果から示唆される内容について、成果をわかりやすく一般の人に伝えるため、生活者の視点からあらためて内容を整理し、Webページを作成した。
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