研究課題/領域番号 |
19H02303
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
岩下 剛 東京都市大学, 工学部, 教授 (90253905)
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研究分担者 |
後藤 伴延 東北大学, 工学研究科, 准教授 (20386907)
飯野 由香利 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (40212477)
倉渕 隆 東京理科大学, 工学部建築学科, 教授 (70178094)
北山 広樹 九州産業大学, 建築都市工学部, 教授 (70221918)
長谷川 麻子 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (80347004)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 熱中症 / 換気設備 / インフルエンザ / 冷房 / 暖房 |
研究実績の概要 |
学校空気環境へ及ぼす影響として、教室の建築形態が挙げられる。そこで、教室と廊下の境界の壁を取り去ったオープン型教室と従来型教室にて空気環境実測を行い、空気の汚れの指標であるICONEを用いて比較を行い、換気設備およびオープン型教室の有効性を確認した。 また、東京地域にある、換気設備の有無、有の場合は種類の異なる小中学校4校を対象に夏期、中間期、冬期の室内空気環境を中心とした調査を実施し、全熱交換機が導入された教室は十分な換気が行われているのに対し、換気設備のない教室では必要換気量を満たしておらず、ICONE 指標でも良好な値が得られなかった。窓開換気のみでは必要換気量を満たすのは限界があり、適切な換気設備の導入が求められることがわかった 九州北部地域における、空調設備が設置された公立小学校の普通教室にて、冷暖房使用と温熱・空気環境の長期実測を行い、室温が外気温より高く25℃~30℃になると,冷房使用時間が長くなり、その間の温湿度は適正に維持されるが、CO2濃度は上昇して基準値を超えることがわかった。一方、室温が15℃より低くなると暖房の使用時間が長くなり、温湿度は適正に維持されるが、この間のCO2濃度は基準値を大きく超えていた。また、冬季のインフルエンザによる欠席者数は、外気温度が低くなると増加する傾向がみられた。いずれにおいても、換気の重要性を示唆しており、換気設備が併置されない教室の換気方法が課題とされた。 学校体育館への冷房導入率は教室に比べ高くはなく、令和元年9月の時点で2%である。学校体育館の機能性向上を図るためS区では2021年度までに区立の全小中学校90校の体育館に空調設備の取り付けを計画している。そこで、2019年度は2019年度に体育館冷房が導入された学校体育館で室温実測を行った。実測結果から冷房導入が熱中症リスクの低減にどの程度の効果があるかの試算を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでは、日本スポーツ振興センターの災害共済給付オンライン請求システムに記録されている学校事故データと気象データとのマッチングを行って、事故発生時の屋外気象状況を調査して来た。その際、気象データが都市単位で記録されている背景から、上記の調査も都市単位で行ってきた。しかし、学校教室への冷房導入が全国規模になってきた現在、解析の地域範囲を代表的な都市だけでなく、全国規模にして考えることが重要と考えられる。そこで2019年度は、日本スポーツ振興センターの学校事故データの熱中症に着目し、経年変化を把握することによって、冷房導入の影響を、今後調査する上での基礎資料とした。 一方、学校体育館への冷房導入率は教室に比べ高くはなく、令和元年9月の時点で2%である。しかし、学校体育館は災害時の避難施設としての機能があり、実際に東京都S区では、令和元年東日本台風の際、区立の6つの小中学校体育館が避難所として使用された。学校体育館の機能性向上を図るためS区では2021年度までに区立の全小中学校90校の体育館に空調設備の取り付けを計画している。そこで、2019年度は2019年度に体育館冷房が導入された学校体育館で室温実測を行った。 当初の予定であった、教室内温湿度・CO2濃度リアルタイム計測提示システムを異なる地域の学校で計測を開始できた。またその解析を行った。 国内の異なる地域の小中学校において、冷暖房、換気と、その健康性への影響に関する実測を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
教室環境だけでなく体育館・格技室の空気環境を考察対象として加えることを計画している。 地域によって異なる、冷房・暖房・換気設備の稼働状況に配慮した上で空気環境の解析を行うようにする。 軸流形送風機等、換気機器ごとの特性に配慮した解析を行う。 冷暖房使用時間と空気環境、インフルエンザ・熱中症発生状況との関係に着目するようにする。 インフルエンザ対策、熱中症対策としての学校環境設備の使用方法について、提案することを当初の目的としたが、新型コロナの問題が生じている本年は、コロナ問題化の学校環境の実態についての調査を加えることが有用と考えている。
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