研究課題/領域番号 |
19H02307
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
姥浦 道生 東北大学, 工学研究科, 教授 (20378269)
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研究分担者 |
秋田 典子 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 准教授 (20447345)
苅谷 智大 東北大学, 工学研究科, 学術研究員 (40750956)
三宅 諭 岩手大学, 農学部, 准教授 (60308260)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 復興 / まちづくり / 漁村 / 土地利用 |
研究実績の概要 |
(1)空間形成実態論:石巻市市街地部を事例として、被災後の建物再建動向を時系列的に調査し、従前土地利用ごと、区域ごと、事業ごとに時系列的に変化があること等を明らかにした。 (2)規制・事業制度論:嵩上げ型土地区画整理事業の事業区域内において空き地が発生している要因を調査した。その結果として、事業前後の土地利用の変化として建物が再建されないことにより空き地が増加していること、民地買収による公共事業地が空地化防止に寄与していること、さらには土地の売却・再建と外形的要因との関係性や、再建状況と被災直後の被災者意向との関係性について明らかにした。また、防災集団移転事業によって居住地移転を行なった石巻市雄勝地区の住民を対象に、新たな居住地として高台移転地を選択した住民と、内陸側の土地区画整理事業地を選択した住民の、居住満足度の違いに関するアンケート調査を実施した。漁業集落復興に関しては、漁業集落防災機能強化事業による居住地移転を行った岩泉町小本地区において、復興事業評価のアンケート調査を行った。復興事業のスピードおよび内容に関して全般的に好評価の住民の多いが、移転先住宅地整備の進め方の評価はあまり高くないことがわかった。早期再建が好評価につながっているが、進め方の課題を検証する必要があるといえる。 (3)空間マネジメント論:石巻市、大船渡市、陸前高田市で活動するまちづくり会社へのヒアリング調査を行った。施設の管理業務や地代の減免等の事業インセンティブを付与されることにより、エリアマネジメントへ注力させる枠組みが、整備計画に組み込まれてきた実態を窺うことができた。また低平地利用に関しては、その持続的なマネジメント手法について、同上の石巻市雄勝地区で住民や行政と協働で実践的に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)空間形成実態論に関しては、本年度の目標であった石巻市市街地部を中心に、土地利用・建物再建の実態を調査し、従前土地利用、用途、事業別の復興の時系列的変化の実態を明らかにしており、おおむね目標は達成されたといえる。 (2)規制・事業制度論に関しては、土地区画整理事業の効果と課題を、大槌町の2地区を対象として調査することを通じて明らかにした。この成果は、今後の被災時に嵩上げ型の復興を行う際に有用な知見となっている。また、防災集団移転促進事業の効果についても、現地嵩上げ再建と比較しつつ明らかにした。この成果は、復興における事業手法選定時に寄与する情報となっている。さらには、漁業集落防災機能強化事業についても、住民の満足度を明らかにした。この成果は、本事業の円滑な推進にあたって考慮しなければならない事項を明らかにしている。このように、各種事業制度の運用実態とその課題については、かなり幅広く明らかにしており、ここで得られた知見は、いずれも次の復興活動において役立つことが期待されるものである。その意味では、計画以上の成果を挙げたといえる。 (3)空間マネジメント論に関しては、まず中心市街地に関しては、各被災地域における事例も成熟しつつあり、それに対する調査も順調に進行してきている。一方で低平地に関しては、まだ研究対象とすべき事例を育てるための実践的活動を行っている段階である。その意味では、必ずしも想定通りに進んでいるとまでは言えない部分もあるものの、次年度以降は、これらを研究対象として扱うことで十分な成果が得られることが期待される。 以上の点から、全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、これまで概ね順調に研究が進行しているため、当初の計画通りに研究を進行させることとする。具体的には、以下のとおりである。なお、コロナウイルス問題により、現地調査等が非常に困難な状況になっている。そのため、本研究計画についてもその状況の変化に応じて柔軟に見直すこととする。 ①規制・事業制度の運用実態の把握と効果・課題の検証に関しては、条件付き災害危険区域指定後の市街地形成実態と課題の検討を行う。さまざまな住民意向を実現するための手法ではあったが、その都市計画的課題について明らかになることが期待される。 ②中心市街地まちづくり会社によるエリアマネジメントに関しては、被災市街地の土地利用・商業施設の実態についてマクロ的な調査分析を行い、まちづくり会社の活動背景や要因について明らかにする。特に、被災から9年以上が経過し、中期的課題が見えてきていることが想定される。 ③漁業集落に関しては、復興空間計画・事業計画の実態把握と類型化を行う。 ④空閑地マネジメントに関しては、初年度に実践活動を積み重ねた、大規模空閑地の空間マネジメントの実態とコミュニティ再生効果の検証を行う。また、特に漁業集落部の防集事業移転元地における「土地利用需要のない土地」の利用計画の策定手法の検討及び実践・検証も、合わせて行う。この研究成果は、日本全国の地方都市に存在する空き地・空き家が多数存在する空間の積極的計画技法の創出へと結びつくことが期待される。
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