研究課題/領域番号 |
19H02331
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井上 朝雄 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (70380714)
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研究分担者 |
土居 義岳 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (00227696) [辞退]
土屋 潤 九州大学, 芸術工学研究院, 講師 (40448410)
谷 正和 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (60281549)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バナキュラー建築 / 鉄骨 / 編年 / I形鋼 / 英領 |
研究実績の概要 |
この研究の目的はアジアの旧英領植民地の英領期(19世紀後半から20世紀前半)の住居や店舗などのバナキュラー建築を、使用されている鉄骨部材を考古学的手法により編年しその建設年代を特定する方法論を開発することである。2019年度は、断面寸法の変化による編年法、生産時期の変化による編年法、流通の変化による編年法の確立に取り組んだ。 断面寸法の変化による編年法については、現時点で入手できているカタログに記載されているI形鋼のウェブの厚みやフランジの厚みを中心に注目し、他の年との差が比較的大きいと認められたものを抽出した。これは、圧延機などの発展によりより薄く製造することが可能になっていったこと、およびBSの制定や改訂が影響していると考えられる。しかし、この方法は実測の精度の高さが求められる。生産時期の変化による編年法については、カタログを複数年分入手することができたDorman Long社、Frodingham社、Cargo Fleet社に関しては、複数サイズのI形鋼の製造年代をある程度特定することができることが明らかとなった。これにはBSの制定や改訂が大きく影響して、製造するI形鋼のサイズの種類が変化したことによるものが多いと考えられる。流通については、1871年から1899年にかけてのイギリスからの鉄製品の輸出は、イギリス領インドにおいてはボンベイとベンガルが中心で、1875年あたりから1889年あたりまで各年10000トンを大きく超える輸出量である年もあった。これは他のアジアやオーストラリア植民地と比べても圧倒的に多いと言える。建設用鋼材の輸出については、1887年から1893年頃まではベンガルやビクトリアに向けたものが中心で、それ以降1899年まではセイロンやニュージーランドへと中心が移ったことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスの世界的な流行の影響により、2019年度末に予定していた、イギリスでの調査が実施できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、海外での文献調査や実地調査にもとづくため、今後の研究計画は新型コロナウィルスの状況次第であるが、ロールマークの変化による編年法、断面寸法の変化による編年法、生産時期の変化による編年法、構成元素の変化による編年法、構法の変遷や流通による編年法を確立させ、続いて、年代特定方法の妥当性を検証するため、旧英領植民地に残存するすでに建築年代が判明している鉄骨が用いられているバナキュラー建築を編年し分析する。続いて、それらの適用可能性を評価するため、植民地時代のバナキュラー建築に対して建築物の年代推定を試み、その経過を分析し、問題点を抽出する。
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