研究課題/領域番号 |
19H02332
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
角 哲 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (90455105)
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研究分担者 |
大場 修 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 教授 (20137128)
村上 しほり 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 特任准教授 (50746104)
砂本 文彦 神戸女子大学, 家政学部, 教授 (70299379)
玉田 浩之 大手前大学, 建築&芸術学部, 教授 (70469112)
長田 城治 郡山女子大学, 家政学部, 准教授 (70734458)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 占領 / 接収 / 建築 / 都市 / 占領 / キャンプ / 基地 / 観光 |
研究実績の概要 |
国内外の資料館における文献調査と現存する接収施設の現況調査,研究会を実施した. 国内では,戦災復興への影響を検討するため,国立公文書館で都市計画関連文書,また,講和条約発行後も占領状態にあった主要都市に関する1958年の調査報告を収集した.しかし,福岡はその時点で接収解除の見込みのなかったため,福岡県合同公文書館などで福岡市の接収施設と春日市にあった米軍キャンプである春日原基地に関する調査を実施した.いずれも米第5空軍が進駐し,現福岡空港など飛行場を重視したこと,日本だけではなく緊張状態にあった中国と台湾,朝鮮半島など極東地域における施策の拠点となったことが部隊配置と基地施設の仕様から理解できた.さらに,日光金谷ホテル所蔵資料の収集と整理,改修計画のある京都の接収住宅や鳥取市の接収施設に関する調査なども実施した. 国外では,豪州の戦争記念館で英連邦軍のうち豪州軍に関する資料と戦中から戦後にかけて米軍が継続的に作成した太平洋極東地域に関する報告書を収集した.豪州軍の資料には文書のほか,呉市の新設キャンプの概略図などが所収されており,空間的な情報を把握できた.また,米軍の報告書は戦中に日本の沿岸部と主要都市を偵察した情報を元にまとめたもので,こうした情報が戦後の接収施設の選定に影響したことを知る上で有効であった. 研究会はオンラインと対面で実施し,オンラインの研究会では収集資料の情報を共有し,研究の論点を整理した.また,対面の研究会は岩手県盛岡市で開催し,占領軍が花巻温泉と盛岡市の接収施設の巡検を行なった.花巻温泉の巡検は,国際観光ホテルであった日光金谷ホテルと同様,戦前に開発された観光地が占領軍の休暇地としてどのように利用されたかを理解することを目的としたものである.また,研究会では,特に米国国立公文書館で収集した写真をどのようにデータベース化し,公開するかについて議論した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ禍による渡航規制によって国内外の調査,特に海外渡航に制限があったため,当初の計画が後ろ倒しになったため「やや遅れている」と判断した.しかし,新型コロナ禍で資料館などが閉鎖された結果,検索システムやデジタル公開資料が充実した結果,効率的な資料検索が可能になり,当初,想定していた内容よりも進展が見られた面もあった.また,公表した成果によって占領下資料を検討する国公立の機関や市民団体と接点を持つことができたのはいい意味の誤算となった.
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今後の研究の推進方策 |
国外調査の際,よって豪州国立公文書館などの資料の所在について助言を得たため,次年度に繰越をした予算を用いて閲覧,収集することとした.豪州の資料館はデジタル公開が進んだ地域であるが,国立図書館などには未公開の資料も多いといい,英連邦軍を中心に情報が得られると予想している. また,例えば名古屋都市センターで講演した際,現存する接収住宅所有者が所蔵する未見の資料の所在を得ることができた.日光金谷ホテルなどでも同様の状況で,個人や団体が所蔵する資料の所在を掴むこともできた.こうした資料の全体像を把握することは難しいが,情報交換を積極的に行ない,公文書以外の資料の収集を試み,より多角的な考察を行ないたい.
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