研究課題/領域番号 |
19H02338
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
荒木 幹也 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (70344926)
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研究分担者 |
志賀 聖一 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (00154188)
GONZALEZ・P JUAN 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (30720362)
中田 大将 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 助教 (90571969)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ジェット騒音 / 音源移動 / 相対速度 / 非線形伝播 / ドップラー効果 |
研究実績の概要 |
次世代超音速機/極超音速機の研究・開発が各国で進められている.実機が存在しないこれらの機体の「離陸騒音」は,「静止ノズル実験からの予測」より大きいのか?小さいのか?これが我々の「問い」である.ジェット騒音の強さは「ジェット速度の8乗」に比例する.超音速巡行に特化し,離陸時から「1,000 m/s 級のジェット速度」で運用され,離床後の飛行速度も「150 m/s オーダ」と極めて高速である.この「音源の高速移動」を,ハイブリッドロケット推進の「高速走行軌道」で再現し,「相対速度減少による騒音減少」「非線形音波の伝播に伴う騒音増大」「従来の球面波モデルが適用困難なドップラー効果」の「3つの壁」について実験的に調査を行う.最終的には,「静止ノズル実験のデータ」から「実機離陸騒音」を推算する手法の提案を目標とする. 初年度(2019年度)は,室蘭工業大学・白老高速走行軌道において,単発ハイブリッドロケットをスラストスタンドに固定し,静止状態での音響計測を積み重ねてきた.フィールドでの計測ノウハウを確立するとともに,ハイブリッドロケットの基礎的音響特性を解明してきた.この結果,大音響音源特有の「非線形伝播」による波形変形が予想以上に進行していること,ハイブリッドロケット特有の「チャギング」と呼ばれる低周波騒音がかなりの大きさで重畳すること,地上反射波の影響が無視できないこと,の3点が明らかとなった.非線形伝播では,音源からの距離とともに波形変形が進行していくため,騒音の最大放射角度となるライン上にコンデンサマイクロフォンを配置し,伝播距離と波形変形の関係を明らかにしてきた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終的な目的は,「相対速度減少による騒音減少」「非線形音波の伝播に伴う騒音増大」「従来の球面波モデルが適用困難なドップラー効果」の「3つの壁」について実験的に解明していくことにある.その前提として,ハイブリッドロケットそのものの基礎的な騒音放射特性を知ることがなにより重要であり,これが初年度の目的であった.数度にわたる事前調査ののち,静止ノズルでの騒音放射特性取得の実験を積み重ねてきた.非線形音波の予想以上の進行と,ジェット騒音以外の騒音の重畳という課題が見いだされ,それぞれについて対策を行っている.現在,コロナウイルス対策のため実験が停滞しているところであるが,解析は鋭意進めており,本年度中盤から後半にかけての実験に反映できる見込みである.
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今後の研究の推進方策 |
本年度(2020年度)は,コロナウイルス感染拡大により室蘭工業大学への遠征が困難となることを想定し,まずはこれまでの取得データを精査し,「非線形伝播」「チャギング」「地上反射音」の影響評価とそのメカニズム解明を行う.チャギングは,燃焼室の圧力変動と酸化剤流量変動がカップリングを起こす低周波振動現象である.取得音響データからこれを除去することは難しく,純粋なジェット騒音のみの音響放射を得るには困難を伴う.そこで,群馬大学に設置のジェット騒音テストリグにおいて音響シミュレーションを行い,チャギングの影響を排除した場合の音響データを取得し,白老試験場で計測された実機データとの比較を行う.年度後半に室蘭工業大学への遠征が可能となった場合は,いよいよ移動ノズルの音響計測を本格化する.ここでは「相対速度減少」と「ドップラー効果」が検出されると期待される.スレッド(台車)の位置計測,音響データとのシンクロ,地上反射音除去など課題が多くあるが,ひとつひとつ解決し,最終年度での成果創出を目指す.
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