研究課題/領域番号 |
19H02345
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉村 彰記 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (20462898)
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研究分担者 |
後藤 圭太 名古屋大学, ナショナルコンポジットセンター, 准教授 (00760935)
荒井 政大 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (30260532)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 炭素繊維強化複合材料 / 接着構造 / 破壊靭性 |
研究実績の概要 |
本研究ではCFRP/CFRP間およびCFRP/金属材料間の接着・溶着接合に対して詳細な破壊プロセスを学術的に解明し,これを用いたCFRPマルチマテリアル構造の設計技術の実現を目指している。 2020年度までにCFRP/CFRP接着接合について詳細な検討を実施した。CFRP/CFRP接着試験片に対し,モード比を様々に変更した混合モード試験(MMB試験)および,静的・動的なWedge-DCB試験を実施した。後者の試験は本研究のために試験ジグ等を検討,製作した。 その結果,接着部の破壊時に破壊モードの遷移,特に凝集破壊から界面破壊への遷移が発生すると,破壊が不安定進展し,接着破壊靱性値の大幅な低下につながることが明らかになった。この破壊モードの遷移はき裂の偏向を伴い,混合モード破壊試験の場合,モードII変形の割合が多い場合は発生せず,モードI変形の割合が大きい場合に発生しやすいことがわかった。また,動的Wedge-DCB試験の結果からは,動的試験の場合にはこのようなき裂偏向は発生しないことも明らかになった。 また,詳細な破面観察を行うことにより,これらのき裂偏向は三種類に分類することが可能であることが明らかになった。この内2種類については有限要素法を用いた解析と,デジタル画像層間法(DIC)を用いたひずみ場の詳細な観察によってメカニズムを明らかにした。 2021年度には,この結果を踏まえ,き裂偏向のメカニズムを明らかにし,これによってCFRPの接着接合・溶着接合の破壊プロセスを明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の当初計画では,実験と詳細な観察によってき裂偏向の発生条件を明らかにするとともに,数値解析を用いたマルチスケール損傷解析シミュレーションの実施を計画していた。 2020年度の研究実績ではCFRP接着接合の破壊プロセス観察によって,き裂偏向の発生条件に複数のパターンが生じることがわかり,これと損傷解析シミュレーションを比較することによって,破壊プロセスの解明を行うことができた。 ただし,2020年度の研究では,3種類のき裂偏向パターンについて,2種類までのメカニズム特定に留まった。この点は,破壊メカニズムが当初計画で考えていたよりも複雑であったことに起因している。この意味で当初予定よりも研究は若干送れているとも言えるが,その分,より詳細に破壊メカニズムが解明できつつあり,総合的にはおおむね順調に進展していると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度には,CFRP/CFRP接着接合について,き裂偏向メカニズムのうち,今年度未解明になっていた1種類の発生メカニズムについて検討する。 MMB試験を実施するとともに,数値解析,X線CT(名古屋市工業研究所の設備を借用)を併用してメカニズムを解明する予定である。 また,2020年度までに接着試験片によって確立した方法を元にして,熱可塑CFRPを用いた溶着試験片,およびCFRPと金属の接着接合試験片についても同様の検討を実施し,当初研究目的であった,CFRP/CFRP間およびCFRP/金属材料間の接着・溶着接合に対する詳細な破壊プロセスの学術的な解明を達成したいと考えている。 き裂偏向のメカニズムはCFRP/CFRP試験片とCFRP/金属試験片で大きく違いはない(内部の応力状態のみが異なる)と予測しており,2020年度までに確立した手法で分析が可能であると予測している。
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