研究課題/領域番号 |
19H02347
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
岩佐 貴史 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (90450717)
|
研究分担者 |
藤垣 元治 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (40273875)
樋口 健 早稲田大学, 理工学術院, 客員教授 (60165090)
岸本 直子 摂南大学, 理工学部, 教授 (60450714)
勝又 暢久 香川大学, 創造工学部, 准教授 (60534948)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 膜面構造物 / 非線形ダイナミクス / 空間分布 / 画像計測 / 応答予測 |
研究実績の概要 |
本研究は,宇宙展開型膜構造物の複雑な振動応答を離散点計測データから簡易的に予測するための方法論の構築に向け,「薄膜の振動応答の空間分布特性」と「その生成メカニズム」について検討を行っている. 2020年度は,格子投影法計測システムの精度向上に係る検討を行い,カメラの絞り,計測範囲,投影装置の輝度値等を調整することで1.5mの計測対象物の動的挙動を0.2mm程度の精度で計測できるようにした.また,展開型膜構造物モデル専用の取り付けジグを新規に製作し,計測時に薄膜の展開挙動が計測空間を逸脱しないように実験装置を改修した.これにより,格子投影法を用いて展開型膜構造物モデルの振動応答を高い空間分解能で確実に計測できるシステムを構築した. 次に,展開型膜構造物モデルを対象に計測実験ならびに有限要素解析を行い,薄膜の振動応答の空間分布特性について検討した.その結果,展開型膜構造物モデルにおいても周波数帯に関係なく振動応答スペクトルの空間分布に類似性が生じる場合とそうでない場合が観測された.この結果は前年度の単体膜モデルの計測結果と同じ傾向を示しており,現在,振動モード形状のパターン特性に着目し,どのような構造条件を満足すれば振動応答スペクトルの空間分布に類似性が観測されるか考察中である. また,前年度の成果を発展させ,単体膜モデルを対象に限られた離散点計測データから薄膜の振動応答上限値を簡易的に推定する方法論を構築し,国際誌(AIAA Journal)へ掲載した.この成果は本研究課題の核心に迫る重要なものであり,研究期間の2年目で纏められた意義は大きい.さらに,本研究と並行して格子投影法計測システムの高度化に係る研究も進展させ,キャリブレーションを不要とする形状計測法を構築し,現地キャリブレーションが困難な場合でも適切に計測ができる方法等を開発した.これらの成果も国内誌,国際誌へ掲載した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目に計画していた1)単体膜モデルの振動応答の空間分布特性とその生成メカニズムの解明と2)展開型膜構造物モデルを対象とした振動応答の空間分布特性の検討までを順調に行うことができた. 1)に関しては単体膜モデルの振動応答の空間分布とその生成メカニズムを明らかにするととともに,その発展として離散点データを利用した予測法までを構築し,これらの成果を国際誌に掲載した. 2)に関しては展開型膜構造物モデルの計測実験を通して,単体膜モデルの振動応答の空間分布特性の妥当性等について検証した.薄膜の振動応答の空間分布は展開型膜構造物モデルと単体膜モデルで類似な傾向が観測されたが,定量的な検討までは完了しておらず次年度において引き続き検討していく予定である. また,本研究課題を遂行していく過程において,薄膜の形状計測に必要不可欠な光学的3次元計測に係る研究を発展させ,キャリブレーションが不要な計測法を構築した.本研究で使用する3次元計測技術は薄膜のような柔軟構造材料の形状計測に必須な技術であり,この分野において今後さらなる利用が期待される. 以上の観点から,本研究課題は概ね順調に進展しているものと判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は,これまでに取得した展開型膜構造物モデルと単体膜モデルの振動計測データを基に,薄膜の振動応答スペクトルの空間分布特性の普遍性について検討するとともに,得られた成果を学術論文としてまとめていく. 1)展開型膜構造物モデルや単体膜モデルの寸法等を変化させて計測実験を行い,計測結果を基に薄膜の振動応答スペクトルの空間分布の普遍性について検討していく.特に,薄膜の振動応答スペクトルのモデル依存性や類似性の生じる原因等は前年度からの継続課題であり詳細な実験を通して解明を試みる. 2)展開型膜構造物モデルの計測実験で生じた3次元計測に係る技術的課題を整理し,その解決に向けた研究を引き続き実施する.そして,3次元形状計測技術の高度化に向けた研究をさらに発展させていく.
|