近年の挑戦的な遠方外惑星探査計画において、地球再突入カプセルによるサンプル・リターンが担う役割は大きいが、その突入速度は前例のない15 km/s以上に達する。このような超高速突入では、輻射により衝撃波の前方に発生する先行電子の影響のため、カプセルの加熱が20 %程度も増加する可能性がある。この予測を検証するためには、高速衝撃波管実験で先行電子を実測する必要があるが、その密度域に適合する高精度計測法が確立されていない。そこで本研究では、高感度レーザートムソン散乱(LTS)法を用いて、先行電子の温度・密度を計測し、先行輻射の物理モデルを確立することを目指している。また、超高速衝撃波を地上で再現する装置として、大型の二段隔膜自由ピストン衝撃波管があるが、利用機会が限られる。そこで、超高速衝撃波を簡易に再現できる方法として、パルスレーザーで駆動した爆轟波を提案し、その有用性を実証することも目的である。本年度は、CO2パルスレーザーを用いて、大気圧下でレーザー爆轟波を駆動し、その進展をシャドウグラフ法で可視化して、爆轟波面近傍の発光分光計測とLTS計測を実施した。分光結果から電子に起因する強い連続スペクトル(先行輻射)が幅広い波長範囲に渡って発生しており、爆轟波面近傍は数万度の高い温度となっていることがわかった。一方、電子からの強い連続スペクトルに阻害され、LTS光を検出することはできず、今後は、光学系を工夫し、連続スペクトルの影響を弱める必要があることがわかった。また、レーザー爆轟風洞の可能性を探るため、数値解析を実施し、爆轟波近傍電子物理量のレーザー波長依存性を調べた。その結果、CO2レーザーと比較して、1 um波長帯の固体レーザーの方が、電子カットオフの影響を受けずにエネルギーをプラズマに投入できるため、超高速突入環境の再現に有利となる可能性があることがわかった。
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