人工構造物による魚類の蝟集には、構造物への付着生物などの餌環境や、捕食生物からの隠れ家効果などが関連している可能性があると考えられている。局所的な水中の魚類の挙動を把握するためには、音響カメラ等によるモニタリングと画像解析を組み合わせたシステムが有効であると考えられる。人工構造物周辺の魚類の出現パターンを把握するために、東京大学海洋アライアンスが所有する平塚観測タワーの海中部に音響ビデオカメラを約1年間設置して、ほぼ通年のデータを取得することに成功した。また、取得したデータから画像解析により画像内の魚の尾数や大きさ、位置を自動的に抽出する手法を構築した。構築した手法を通年のデータに適用することによって、魚の出現パターンの季節変動を把握することができ、環境要因との関連についての考察を行った。広域における魚類分布の把握に関しては、伊勢湾において漁具に環境計測センサーを装着することによって、漁船を用いて海域環境(水温、溶存酸素など)と魚類の分布を同時にモニタリングしている。この伊勢湾における底びき網漁業のデータ5年分を対象に解析を行った。特にマアナゴのCPUEについて、機械学習の1つであるランダムフォレストを回帰に適用したアルゴリズムを用いた推定を行い、年による違いや説明変数の選択等について検討を行った。その結果、水温、DO、水深の各曳網における平均値のみを説明変数とした場合より、それらに加えて操業位置(緯度、経度)、操業時間帯、エサとなる甲殻類のCPUEを説明変数とした場合のほうが精度が向上することなどがわかった。さらに説明変数として漁場の相対水温が有効である可能性があることを見出した。
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