研究実績の概要 |
船舶ディーゼルエンジンのNOx規制対策技術として,波長172 nmの真空紫外線(VUV)による常温・無触媒・還元剤なしで起こる光脱硝装置を開発した。今年度は,素反応解析により,光脱硝反応メカニズムの解明を試みた。詳細化学反応解析ソフトウェアANSYS Chemkinを使用し,反応器モデル,素反応モデル,反応条件を設定し,光脱硝反応の反応メカニズムを推定した。実験結果から反応速度パラメータを算出した。初期NO濃度600 ppm,O2濃度8.0 %,水分濃度7.0 %におけるNO/H2O/O2/N2混合ガス系のNO除去率をガス滞留時間に対してプロットし,素反応シミュレーション結果と比較した。両者は精度良く一致し,VUVの照射によってH2OからHO2, NO3, OHが生成して脱硝反応が起こり,生成物はHNO3, NO2, N2であることがわかった。 なお,本研究で推定した光脱硝素反応メカニズムは,(1)光分解,(2)気相ラジカル反応,(3)オゾン生成・消滅反応,(4)硝酸生成・消滅反応,(5)N2生成反応についてであり,特に光分解反:NO + hν → N + O, O 2 + hν → O + O, H2O + hν → OH + H の速度パラメータの実測結果は光化学反応分野に大いに貢献するものと考える。ただし,光エネルギー(光子数)が反応速度に及ぼす影響は非常に大きく,今後,光子数を速度式に組み込む必要がある。
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