研究課題/領域番号 |
19H02359
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鈴木 博善 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (00252601)
|
研究分担者 |
井上 朝哉 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球深部探査センター, 主任技術研究員 (10359127)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ドリルパイプ / マグナス効果 / 回転円柱 / ANCF / CFD |
研究実績の概要 |
「非定常マグナス効果によるドリルパイプのダイナミクスに関する研究」として初年度の研究を行った。本年度は、大阪大学船舶海洋試験水槽にて、回転することによって発生するマグナス効果による揚力を受け、潮流中で変形するドリルパイプの挙動に関する実験、および大阪大学研究用風洞において、ドリルパイプの一部を模した回転円柱に作用するマグナス効果による揚力を含む流体力の表面粗度の影響の調査に関する実験を行った。 前者は、曳航水槽での実施のため、曳引車に深さ3mの仮設の水底を設置し、ドリルパイプ模型の下端位置を固定する計測を行った。このとき、上端の位置を変化させることで、Weight on Bitの変化に伴う、回転するドリルパイプの一様流中挙動の変化を観測することができた。後者は、表面が平滑な円柱に対し、レイノルズ数、および回転比が実機に近い状態での計測を実施した。その一方、円柱に粗度がある場合の計測も行い、粗度によって円柱に作用する流体力がどのように変化をするか検討を行った。 これらに対応する計算としては、ANCFによる、数値的なドリルパイプの水中挙動の予測法の検討・改良、およびCFDによる回転円柱周り流れおよび円柱に作用する流体力の予測を行った。前者では、ANCFによる数値計算法によって、ほぼ実験でのドリルパイプ模型の挙動を推定できることがわかったが、さらなる改良が必要なこともわかった。さらに、後者では、CFD手法によって、一様流中で回転する円柱に作用する流体力の推定が、大略可能であることがわかった。 以上の結果を用いて、ANCFによる実機スケールドリルパイプの挙動推定の試計算も行ったが、研究調書で指摘したように、実際のドリルパイプ挙動が不明なため、評価をすることができない。したがって、実機計測あるいは既存データの抽出による計算データの評価は、2年度目の研究による成果を待ちたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「非定常マグナス効果によるドリルパイプのダイナミクスに関する研究」の研究計画では、初年度の研究として、マグナス効果による揚力と円柱の斜航角との関係を知るために、I)模型実験(1):斜航回転円柱周り流れの可視化、流体力計測(2019年度:鈴木)とII) CFDによる斜航回転円柱周り流れの計算(2019年度:鈴木)を計画していた。一方、初年度の実施内容は、上記に加え、2年度目に実施予定のIII) 模型実験(2):ドリルパイプの運動に関する模型実験(2020年度:鈴木)、IV) 模型スケールでのANC法による計算、計算法の評価・改良(2020年度:鈴木)などの研究の一部を実施することができた。 さらに、地球深部探査船「ちきゅう」でのドリルパイプの変位計測(2020-2021年度:井上)の実施準備および計測可能性の検討を行うことができた。 以上のように、初年度の研究成果は、研究計画を若干先んじてはいるものと考えられるが、今後、実機計測での計画変更、計画遅延なども予想される。このため、研究の進捗状況としては、「おおむね順調に進展している。」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
「非定常マグナス効果によるドリルパイプのダイナミクスに関する研究」の初年度の研究では、予定より多くの成果が得られた。すなわち、当初計画では、初年度、I)模型実験(1):斜航回転円柱周り流れの可視化、流体力計測(2019年度:鈴木)とII) CFDによる斜航回転円柱周り流れの計算(2019年度:鈴木)を計画していたが、これらを実施したうえで、さらに、2年度目に実施予定のIII) 模型実験(2):ドリルパイプの運動に関する模型実験(2020年度:鈴木)、IV) 模型スケールでのANC法による計算、計算法の評価・改良(2020年度:鈴木)もある程度の成果を得ることができた。したがって、今後は、さらに、ドリルパイプ模型試験の高度化(ドリルパイプに作用する力の計測、掘削船からドリルパイプを吊り下げた状態の模擬)などを実施したい。さらに、次年度以降、実機のドリルパイプ挙動およびこの時の周囲環境(潮流速度)情報を得る必要があるが、掘削船「ちきゅう」の掘削スケジュールなどの不確定要素もあり、実際に計測できない場合も考えられる。この場合の対応策も含め、実機スケールのドリルパイプの潮流中挙動の取得方法などについて、検討を行っていきたいと考えている。
|