研究課題/領域番号 |
19H02361
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
赤澤 輝彦 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (30346291)
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研究分担者 |
梅田 民樹 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (90243336)
岩本 雄二 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (80244680)
長松 隆 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (80314251)
細井 祥子 (田辺祥子) 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (80423226)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バラスト水浄化 / 電磁力 |
研究実績の概要 |
アルテミアの卵に最適化した分離器にするため,電極幅を短くした分離装置を設計・製作を行った.電極幅が極端に短くなるため,従来の製作方法では分離器に強度不足が起き,精密に流路を作製することが難しいこと,分離板の厚みも小さくする必要があるため,従来の接合方法では分離空間内に設置できないこともわかった.この問題を克服するために,分離器の設計を見直し,試作・改良を行うことで,当初の予定通りの分離空間をもつ分離器を作製できた. プランクトン計数板を用いたアルテミアの卵の海水中の濃度計測の信頼性を確認するために,画像解析ソフトImageJを用いたアルテミア卵の顕微鏡写真による計数測定から,プランクトン計数板を用いて得られる計数精度の濃度依存性を計測した.このことにより,分離実験において,分離器に投入するための最適な卵の濃度が明らかになった.この濃度に調整した海水を用いて,今後の分離評価実験を行う予定である. また,コロナ禍のため,密になることが避けられない分離実験よりも,数値計算実験に重点をおき研究を行った.特に分離対象物の分離空間での動きに注目し,理論的考察を行った.その結果,分離の機構は,海水に加わる電磁力により,分離対象物に直接的に圧力差が生じ,これにより海水と逆方向に分離対象物が動くとこれまで解釈していたが,これは誤りであり,電磁場が加わることで,分離対象物のまわりに自発的な海水流れが生じ,この流れによる圧力差のため分離対象物が動くことがわかった.これまでの研究では,分離力を単に電磁力による浮力として数値計算に取り込んで数値計算実験を行っていたが,分離対象物にはたらく分離力について,この電磁力による自発流れを取り込み,再度検証する必要があることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により密になることを避けるため,分離装置全体の性能評価実験での作業が制約される状況ではあったが,それぞれの分離装置パートではほぼ予定通りに進んでいる.また,コロナの影響を受けない数値実験に重点をおいたことで,研究実績の概要で報告した通り,分離力のメカニズムを正しく理解できるようになった.このことは,分離性能向上を考える上で非常に大きな発見であり,新しい分離性能向上の手段として利用できる可能性を持っている.以上のことから,研究面で遅れた部分はあるが,予想外な結果から進展が大きい部分もあり,全体としての進捗状況は計画通りの範疇にあると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
本年度,理論面に重きを置いて研究を実施したことで,分離力発生のメカニズムがより詳細に理解できた.分離力を発生させる分離対象物まわりの自発流れを制御することができれば,さらに装置の分離性能を高められる可能性がある.分離力を有効性を増す方策についても新たに検討する必要があると考えている.理論面ではこの点に注目して研究を実施していく予定である.また,分離対象物の自発流れを考える上で分離対象物の電気伝導度が極めて重要なことから,新たに電気化学の専門家を研究分担者として加え,より精密な分離対象物の電気伝導率評価実験を考案し実施する予定である. また,分離装置の各部分で最適化が進んでいるので,次年度はこれらを組み合わせ,分離性能評価実験を行い,より小さな分離対象物が分離できるよう装置改良を行う予定である.
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