研究課題/領域番号 |
19H02361
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
赤澤 輝彦 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (30346291)
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研究分担者 |
梅田 民樹 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (90243336)
岩本 雄二 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (80244680)
長松 隆 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (80314251)
青木 誠 神戸大学, 海事科学研究科, 助教 (40796059)
細井 祥子 (田辺祥子) 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (80423226)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バラスト水浄化 / 電磁力 |
研究実績の概要 |
これまでは分離器を流れる海水の流れ場について注目をおいた研究が行なわれてきた.一方,分離物の移動距離評価に用いる分離対象物にはたらく海水の反力は,海水にかかるローレンツ体積力の単純な浮力として取り扱われていた.我々は2次元流体を用いて海水から分離対象物にはたらく反力が単純な浮力ではないことを示し,従来から考えられていた分離力メカニズムでは本手法の分離は理解できないことを明らかにした.さらに,3次元流体モデルを用いて,分離対象物と海水の伝導率の違いにより生ずる電場の歪によって,分離対象物まわりに局所的な海水流れが生じる.この局所海水流れの効果によって分離対象物に海水から力が働いていることを示した.分離対象物を球形な絶縁体と仮定した場合,従来考えられていた反力の6割程度の力が局所的な海水流れにより絶縁体球に作用することがわかった.次に,局所流れによる相互作用を考えるため2つの球状絶縁体間にはたらく相互作用を検討したところ,絶縁球の移動方向には引力,磁場および電場方向には斥力がはたらくことがわかった.分離対象物の距離が近ければ分離方向に移動する速さは大きくなることも数値シミュレーションからわかった. 実験面では,電磁場中での複数の不導体球がどのように振る舞うかについて光学観測できる実験装置を新たに作製し光学観測実験を行った.作製した実験装置は磁場方向からしか観測できないためまだ詳細な検討は必要であるが,理論面で示唆された電場方向に斥力が働いているようには見られなかった.電極板表面の電気分解で生じる気泡(マイクロバブル)により上昇流が発生するため数値計算結果とズレが生じたためではないかと考えられる.これまで検討されていなかった分離装置内で発生する気泡の効果も分離性能の向上には考慮する必要があることがわかってきた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により,大人数を必要とする実験作業については制約がかかっている.このため当初の計画通りの進んでいない部分もある.しかしながら,数値シミュレーションや理論面での考察に重点を置くことで,これまで本装置の分離力について,間違った理解をしていたことに気付くことができた.このことにより分離対象物が複数あった場合の分離物の振る舞いについての理解が進み,分離性能向上の方向が固まってきている.また,今まで影響は少ないと考えていた電極板で発生する気泡が作る上昇流も分離性能を向上させる上で対策が必要であることもわかり,理論面での進展が著しく進んでいる.よって,全体としての進捗状況はおおむね計画通りの範囲にあると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
分離対象物を小さなものにしていくにつれ,用いる分離器の流路もより小さいサイズのものになってくる.このため微細加工が比較的容易な3Dプリンターを導入し,新たに発見された分離力メカニズムが有効にはたらく小さな流路の作製を行った.しかしながら,現在採用している樹脂では,これまでの実験で問題とならなかった海水での腐食が起きてしまった.流路サイズの小型化に伴う各部品のマイクロ化から腐食が生じてしまったと考えられる.コロナ禍により実験での制約が生じていことに加えて,この腐食が分離実験が大きく進まない原因となっている.この実験面での問題を打破するため,分離器のサイズを腐食の問題が生じないサイズまで戻し,分離メカニズムの効果を取り入れた分離器の形状について詳細に検討する.これと並行して分離器を小型化するための製作方法について再検討を行う.このことで,遅れている実験面の問題を解決する予定である.進んでいる理論・数値シミュレーションの研究では多くの分離対象物の振る舞いについて更に進んだ研究を行う予定である.
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