ガスエンジンの熱効率向上策の一方法として,高負荷運転において燃焼後半に発生する自着火を適切に制御して,ノックに至らない燃焼で終了させる方法がよいことを見出し,その特性に関して研究を継続している.本研究では,以下のように研究を遂行した. まず,1回だけの燃焼が可能でパイロット着火が可能な圧縮膨張機関において,燃焼室のピストン部とヘッド部の両側から同時に燃焼の様子を高速度カメラで撮影した.燃焼室下部からは,3方向への少量の軽油噴射とその後の自着火燃焼,さらに,その3か所を起点とする火炎伝播が観察された.エンドガス部において自着火が生じる条件を確認して,多数回,実験を繰り返した.燃焼室下部からは確認しにくいような壁面近傍での自着火燃焼の場合でも,燃焼室上部から観察すると,エンドガス部での自着火が確認できた.昨年度も実験をしてきたが,自着火部の拡がり速度に関してより詳細に解析した結果,エンドガス部において自着火が生じた場合,その拡がり速度が大きい場合にはノックに至り,ある閾値以下の場合には,PREMIER燃焼(エンドガス部で自着火してもノックにならずに燃焼が終了)になることがわかった.さらに,高速度カメラの速度をもっと増加させることによって,より詳細な自着火の初生が観察できることも明らかになった. また,メタンを主燃料として二酸化炭素を添加した模擬バイオガス,また,メタンの一部を水素に置き換えた場合の燃焼を,単気筒の軽油パイロット方式の実機で1000rpm,吸気管圧力は絶対圧力200kPa一定のもとで軽油噴射時期を変更しながら連続運転して,PREMIER燃焼の特性を調査した.二酸化炭素を添加した場合には,PREMIER燃焼を実現させれば熱効率はむしろ少し高くなる場合があることなどがわかった.
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