船舶からの排出ガスに対する国際的な規制は,今後さらに厳しくなることが予想されている。欧米の一部海域では,粒子状物質(PM)自体の規制が始まり,ブラックカーボン(BC)の環境への影響も懸念されている。船舶の環境保全技術に関して,我が国が先進的かつ主導的な役割を果たすために,NOxおよびBCを含めたPM除去装置を開発することは大変有意義と考えられる。 本研究では,舶用ディーゼル排出ガス中のNOx・PM同時処理技術として,常温から400℃まで適応するパルスパワーを用いた処理システムを構築することを目的としている。パルスパワーは均一で強力な非熱平衡プラズマを発生するため,高温度ガス中においてもスパークせずに安定したプラズマ放電の発生が可能となる。このパルスパワーを電気集塵装置に適応し,NOx・PM同時処理システムの構築を図っている。NOx・PM浄化処理システムは,電気集塵装置(ESPユニット)とプラズマ・触媒ユニットから構成される。ESPユニットでは,パルスストリーマ放電によりPMを捕集する。プラズマ・触媒ユニットは,ブラックカーボン(BC)を含むPMを酸化燃焼する。さらに,排出ガス中のNOもプラズマ・触媒ユニットにおいて除去される。 2021年度はESPモデルにおいて,立ち上がり時間などの試験パラメータを変化させて空間電荷の密度分布を解析し,PM粒子の挙動を明らかにする集塵プロセスのシミュレーションを行った。さらにPIV 解析により最適な電圧波形を用いて,主流体速度やパルス繰り返し周波数によるPM粒子への影響を検討した。そして,実用ESPユニットにおいて,高温時のパルスストリーマ放電における,最適なパルス電圧波形を確認した。以上の結果をもとに,パルスパワーを用いた実用ESPユニットの最適稼働条件を決定し,ディーゼルエンジン排ガスにおける高温集塵性能の向上を確認した。
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