研究課題/領域番号 |
19H02371
|
研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
間島 隆博 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (30392690)
|
研究分担者 |
澤田 涼平 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (00825911)
高玉 圭樹 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (20345367)
福戸 淳司 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (40360713)
佐藤 圭二 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (90734244)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 避航操船 / 学習分類子法 / OZT / COLREGs / 大時定数 |
研究実績の概要 |
以下に示す研究項目(1)~(3)のサブテーマを設け、研究を進めた。 【研究項目(1):OZTによる複数相手船を対象とした避航操船アルゴリズム】避航操船アルゴリズムと航海シミュレータを接続するためのインターフェースを整備した。これより、両者を規格に則って接続することが可能となり、新たな開発アルゴリズムも容易にシミュレーション環境で試行することが可能となった。また、シミュレータには、複数のパターンの見合い関係を航海環境として用意し、その中にはAIS情報を基礎とした東京湾内の実世界の交通流環境も整備した。 【研究項目(2):旋回船のOZT予測と航行可能経路ネットワークの生成】相手船の旋回を含む動向を予測し、ブイ、障害物、浅瀬など、避航すべき領域も考慮して、(1)の経路ネットワークで航行不可なノード、リンクを除去するアルゴリズムを開発した。また、他船との衝突海域を示すOZTにより、避航経路の候補となるネットワーク上で、次に向かうべきWP(Way Point)への経路が見つからない場合、速度を減速する制御方法を追加するとともに、一時遅れ系で表現する簡易な船体運動モデルも導入した。これより、舵角制御による針路の調整と合わせて、衝突回避方法の選択肢が増えた。 【研究項目(3):非マルコフ連鎖型LCSと避航操船アルゴリズムの統合】通常の学習分類子法(以下、LCS(Learning Classifier System)と略す。)はマルコフ連鎖を基礎とし、記憶機能がない。大型船の運動は非常に大きな時定数を持つため、過去の操船の記憶が必要となる。また、旋回する相手船のOZTは大きく移動するため、その位置を予測する必要がある。LCSには複数の派生版があるが、そのうちの一つを実装し、簡易的な設定で船を目標点まで誘導するプログラムを作成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究項目(1):OZTによる複数相手船を対象とした避航操船アルゴリズムでは、衝突が起きる可能性が高くなる海域を示すOZT、および、自船の前方に経路ネットワークネットを張り、ネットワーク理論を活用して避航経路を見出す知識ベースの避航操船アルゴリズムを構築するとともに、簡易的な船体運動モデルを組み込んだ。さらに、航海シミュレータと避航操船アルゴリズムとの接続インターフェースを整備し、新たな開発アルゴリズムも容易にシミュレータと接続できる環境を整えた。さらに、シミュレータには複数の相手船がある見合い関係のパターンを用意するだけでなく、AIS情報を元にして東京湾内の実交通流を再現できるシナリオも用意した。 研究項目(2):旋回船のOZT予測と航行可能経路ネットワークの生成では、ネットワーク上で、次に向かうべきWPへの避航航路が見いだせない場合、減速航行する制御方法を組み込み、このアルゴリズムを上記、東京湾内の実交通流を再現した環境で、シミュレーション航海を試行した。 研究項目(3):非マルコフ連鎖型LCSと避航操船アルゴリズムの統合では、複数の派生版がある学習分類子法(以下、LCS(Learning Classifier System)と略す。)の中から一つを実装し、簡易的な設定で船を目標点まで誘導できるプログラムを作成した。 以上の各項目の研究実施内容から、概ね計画した通りの進捗と判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
複数の見合い船を対象とした、自動避航操船アルゴリズムを完成させることが目的である。そのために、複数の相手船との衝突リスクを同時に見積もることができるOZTを活用した避航経路の算定方法を確立する。旋回中の相手船のOZTの大きな動きを予測するとともに、海上衝突予防法に沿った避航操船が可能となるアルゴリズムを研究する。時定数が大きな大型船を自船の対象とするため、過去の操船状況を記憶し、短期間の未来の状況を予測するLCSを、知識ベースの避航操船アルゴリズムと融合して、自動避航操船アルゴリズムを完成させる。なお、完成されたアルゴリズムの妥当性は、多数の船舶が行き交う、東京湾口、 紀伊水道、関門海峡周辺の日本の輻輳海域において取得されたAIS(自動船舶識別装置)情 報を基礎とするシミュレーションにより検証を行う。このために、今後は、各研究項目の成果を融合して、アルゴリズムの高度化を目指す。
|