研究課題/領域番号 |
19H02373
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
吉瀬 章子 筑波大学, システム情報系, 教授 (50234472)
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研究分担者 |
八森 正泰 筑波大学, システム情報系, 准教授 (00344862)
佐野 良夫 筑波大学, システム情報系, 准教授 (20650261)
繁野 麻衣子 筑波大学, システム情報系, 教授 (40272687)
高野 祐一 筑波大学, システム情報系, 准教授 (40602959)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 錐最適化 / 半正定値錐 / 線形計画問題 / 優対角行列錐 / 二重非負値錐 |
研究実績の概要 |
錐最適化モデルは,線形計画問題や半正定値計画問題を含む広範な最適化モデルであり,21世紀を代表する最適化モデルとして世界的規模で活発に研究が行われている.本研究では,2次割当問題など困難な数理最適化問題に対する「錐最適化モデル」の高い問題記述能力に着目し,応募者らが発案した半正定値基とそれらの拡張によって生成される多様な凸多面錐を精査することで,錐最適化手法のさらなる社会実装に役立つ,半正定値錐の凸多面錐近似の理論を構築することを目的としている.理論的性質の導出と計算機実験を繰り返すことにより,計算効率と近似精度の双方から半正定値錐の凸多面錐近似の限界を見極め,半正定値錐の凸多面錐近似に関する独自の理論を構築するとともに,錐最適化の社会実装を意識した,計算効率の議論と検証を重視した理論構築を目指している. 2021年度は,特に小さなサイズの主座小行列式が非負である性質をもつ行列錐に着目し,半正定値錐の凸多面錐近似における近似精度の導出を試みるととともに,0-1整数計画問題あるいは混合整数計画問題への応用可能性を検証するため,0-1制約の連続緩和による線形計画問題を子問題とする従来手法と,連続緩和の代わりに半正定値緩和の凸多面錐近似を用いた手法の比較を行った. 研究代表者吉瀬は理論の構築,応用可能性の検証など研究全般にわたる役割を担った.研究分担者の繁野氏には組合せ最適化に関する専門知識を,八森氏には組合せ論に関する専門知識を,高野氏には混合整数計画問題や大域的最適化に関する専門知識を,佐野氏には離散数学に関する専門知識を,それぞれご提供頂いた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,半正定値基によって生成される凸多面錐の理論的性質の導出と,錐の近似理論の構築,整数計画問題・組合せ最適化問題・大域的最適化問題への応用可能性の検証を行なっている.2021年8月までに,半正定値錐凸多面体近似理論の実験,国際会議ISMPで発表を行い,2022年3月までに,追加実験、成果取りまとめを行う予定であったが,国際会議ISMPがコロナ禍の影響を受けて延期されたため,計画の遂行は全体的に遅れ気味になっている.以下ではこれまでの研究の経緯と,2021年度に取り組んだ研究内容の概要について述べる. 【理論1(2019年度上半期~2020年度上半期)】半正定値基によって生成される凸多面錐の理論的性質を導出,半正定値錐の凸多面錐近似の理論を確立することを目指していたが,2019年8月にベルリンで行われた国際会議ICCOPTにおいて,本課題とは直接関係のないTilburg大学のDe Klerk教授より研究内容に関する示唆を受け,さらに2019年12月には,Cambridge大学のFawzi講師より新たな理論の発展可能性を指摘する連絡があった.これらを受けて,当初の予定から変更し, 【理論1の継続(2020年度上半期~2021年度上半期)】 半正定値基によって生成される凸多面錐の理論的性質について,特に小さなサイズの主座小行列式が非負である性質をもつ行列錐に着目し,半正定値錐の凸多面錐近似における近似精度の導出を試みるととともに,2020年下半期から予定していた計算機実験の準備を行い, 【応用1(2020年下半期~2021年下半期)】0-1整数計画問題あるいは混合整数計画問題への応用可能性を検証する.0-1制約の連続緩和による線形計画問題を子問題とする従来手法と,連続緩和の代わりに半正定値緩和の凸多面錐近似を用いた手法の比較を行った.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は以下のように研究を進める予定である. 【理論(2022年上半期)】2021年度,半正定値基によって生成される凸多面錐の理論的性質について,特に小さなサイズの主座小行列式が非負である性質をもつ行列錐に着目し,半正定値錐の凸多面錐近似における近似精度の導出を試みた.この結果,半正定値錐の凸多面錐近似に関する新たな理論を構築することができたことから,2022年上半期はこの理論の精緻化に取り組む. 【応用(2022年下半期)】上記で得られた理論の応用可能性について検証を継続する.具体的には,0-1整数計画問題あるいは混合整数計画問題を対象として,0-1制約の連続緩和による線形計画問題を子問題とする従来手法と,連続緩和の代わりに半正定値緩和の凸多面錐近似を用いた手法の比較を行う予定である. 以上の理論と応用に関する成果を数理最適化分野における代表的な国際会議であるICCOPT,ISMP等で発表を行い,並行して投稿論文の執筆を進める.
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