概要本年度はまず,昨年度の研究成果の再検討を行った.渋谷区の商業施設分布への適用例では,広域的には,可視化及び定量化は適切に行われていたが,一部の地域については空間的変動を十分に可視化することができなかった.そこでまず,この手法の依拠している空間スキャン統計量の理論的枠組みを再検討し,一部,尤度の計算方法を改良した.また,計算量を抑制するために,新たなアルゴリズムを開発した.新たな手法を渋谷区の商業施設分布に再度適用したところ,可視化の精度を向上できた.
次に,スマートフォンの移動データから抽出した,渋谷地域の商圏の時間的変動に関する適用例についても再検討を実施した.昨年度の適用では,分析結果は必ずしも想定していたものとはならなかったことから,データと手法の双方について改良が必要と判断した.特に前者については,特定のアプリケーションをインストールしている利用者の軌跡から全体の移動を推定していることから,データの精度に問題があると考え,推定方法を修正した.具体的には,空間解像度を下げることで,真のデータのノイズに対する相対的精度を上げた.この措置に合わせて,分析手法も改良し,再度移動データに適用したところ,より妥当な分析結果を得ることができた.
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