近年,多くの分野で利便性の高いオンラインサービスが現れるようになった.利用者の需要に応じて適切なサービスを割り当てる問題は,限られた計算時間での求解が困難な組合せ最適化問題となる.そのため,オンラインサービスでは現場の経験則に基づく単純なヒューリスティクスが適用される事例が大半である.その結果,利用者の需要に応じた商品が推薦されない,需要と供給の不均衡を解消できないなど,適切なサービスが割り当てられていない事例が後を絶たないのが現状である. 本研究では,多くの入力データが持つ共通した特徴から得られる事前知識が組合せ最適化問題の求解に利用できる可能性に着目し,事前に,不変な入力データからアルゴリズムの性能向上に役立つ特徴を抽出して得られる補助データを利用することで,クエリ時に大規模な入力データの全体を走査することなく最適化計算を実行するアルゴリズムを開発する. 今年度は,オンラインサービスの応用事例を中心に,整数計画問題による定式化と提案アルゴリズムの適用を検討した.オンラインサービスでは,適切なサービスをユーザに割り当てることが重要な課題であり,しばしば,割当問題を雛形とする非常に大規模な整数計画問題に定式化されることが多い.局所探索法は計算困難な組合せ最適化問題に対する効率的なアルゴリズムだが,高性能な局所探索法では複数の変数の値を同時に更新するため,大規模な問題例では十分な計算効率を達成できない問題点を抱えていた.そこで,本研究では,同じ制約条件に含まれる変数の組に絞り込むことで計算効率の大幅な向上を実現した.さらに,オンラインサービスに現れる整数計画問題は割当問題を雛形として持つことに着目し,割当問題に含まれる特殊な制約条件ごとに同時に含まれる変数の組みを抽出することで,さらなる計算効率の向上を達成した.
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