研究課題/領域番号 |
19H02380
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
高嶋 隆太 東京理科大学, 理工学部経営工学科, 教授 (50401138)
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研究分担者 |
田中 誠 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (10377137)
鳥海 重喜 中央大学, 理工学部, 准教授 (60455441)
近藤 潤次 東京理科大学, 理工学部電気電子情報工学科, 准教授 (20357049)
鈴木 正昭 中京大学, 教養教育研究院, 准教授 (10431842)
田中 未来 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 准教授 (40737053)
伊藤 真理 東京理科大学, 理工学部経営工学科, 講師 (20778211)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脱炭素社会 / 送電容量 / プロシューマー / 再生可能エネルギー政策 / 市場均衡 / エージェントベースシミュレーション / 離散選択実験 / 支払意思額 |
研究実績の概要 |
本年度は,下記のそれぞれの研究項目(1)-(5)を,以下のように遂行した. (1)理論競争モデル(主担当:田中誠・伊藤):太陽光発電等の再エネ分散電源の普及は,インフラコストの負担の違い等を通して消費者間の富の分配の不公平を招く懸念が指摘されている.本研究では,プロシューマーの存在する電力市場において,所得に応じて変動する基本料金を導入することで,そのような分配の不公平の問題を緩和できることを示した.(2)エージェントベースシミュレーションモデル(主担当:鈴木・田中未来):卸市場のシミュレーションモデルを構築し,シミュレーションと理論それぞれの分析結果の相違点を明らかにしてきた.本年度はエージェントの非対称性が,市場にどのように影響を及ぼすかについて分析を行い,現実的な状況における理論値との乖離について考察を行った.(3)エネルギー統合評価モデル・電源構成モデル(主担当:鈴木・田中未来):これまで構築してきた電源構成モデルを用いて,地域分散型と大規模集中型それぞれのシステムの協調と競合,不確実性下の電源送電システムの経済性や信頼性の評価,プロシューマーと政策・規制の影響について分析を行った.(4)電力系統影響分析(主担当:近藤・鳥海):2020年度に計測したデータおよび過去に北海道稚内市で計測したデータを用いて,風力発電の出力変動が電力系統に与える影響を評価した.また,再生可能エネルギー普及促進策の経済モデルと送電系統の物理的なモデルとの接合を行った.(5)エネルギー利用選択(主担当:田中誠・鳥海):昨年度に実施した調査結果を用いてエネルギー技術の効用に関する分析を行うとともに支払意思額を測定するための実験を実施した. 上記の研究進捗ついて,報告会を実施し,それぞれの項目の補完について議論を行った.また,上記の成果の一部を,国内の学会や海外の国際会議,論文誌にて発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画を変更はしたが,おおむね順調に進んでいるものと考えている.それぞれの研究項目についての詳細は,以下のとおりである. (1)当初の予定どおり,既存のモデルに発電容量を組み込むことで,電源の投資決定を考慮したモデルに拡張し,発電事業者の投資と市場の社会余剰を考えることで最適な政策の要求水準を算出することが可能となった.また,再生可能エネルギー政策と投資機会の関係を明らかにし,FIT制度やその他の施策に対する電源と送電の投資の関係についても分析を開始した.以上より,本項目では計画以上に進展しているものと考えている.(2)再生可能エネルギー政策を分析するための電力市場やその他の新規市場のエージェントベースシミュレーションモデルを構築することを目標として,特に,エージェントの非対称性に注目して分析を行った.また,(1)で構築した理論モデルとの整合性の確認やエージェント(発電事業者)の非対称性に関する結果が得られ,順調に進捗しているものと考えている.(3)本年度の計画では,再生可能エネルギー政策と電源構成の関係について分析することを考えていたが,現在,注目されている分散エネルギーシステムや再生可能エネルギー電源,プロシューマーの意思決定の影響を組み込むモデルを構築した.(4)当初の予定どおり,経済モデルと送電系統の物理的なモデルとの接合を行った.さらに,風力発電に関するさらなるデータを得るために風速および出力の計測を行い,概ね順調に進んでいる.(5)本年度は,社会調査・実験を実施し,エネルギー技術に対する支払意思額の測定などを行い,計画どおりに進展しているものと考えている. 本年度は,上記項目のいくつかの進捗を国内学会や国際会議等で発表し,さらに,オペレーションズ・リサーチ系の国際会議で関連研究者と議論することができ,来年度の研究目標が明確になったものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
上記の実施内容,進捗状況を踏まえ,次年度以降,各項目において下記のとおり,推進方策を講じて研究を遂行することを考えている. (1) 理論競争モデル(主担当:田中誠・伊藤):導入予定のFIP制度に注目し,市場均衡への影響について分析する.特に,社会厚生の観点から,これまで講じられてきたFIT制度と比較し,FIP制度による市場の変化について明らかにする.(2) エージェントベースシミュレーションモデル(主担当:鈴木・田中未来):(1)と同様にFIP制度について分析をするため,これまでのモデルにFIP制度を組み込み,エージェントの非対称性が,市場に対しどのように影響を及ぼすかについて分析し,(1)の理論モデルと比較を行う.(3) エネルギー統合評価モデル・電源構成モデル(主担当:鈴木・田中未来):これまで構築してきた電源構成モデルを用いることにより,地域分散型エネルギーシステムと大規模集中型システムの協調と競合,送電容量制約下での電力融通と市場,プロシューマーと蓄電池の影響について分析を行う.(4) 電力系統影響分析(主担当:近藤・鳥海):これまで,(1)-(3)のモデルを組み込むための需給・周波数シミュレーション解析モデルを構築してきた.本年度は,再生可能エネルギーの出力変動対策である電力系統の広域運用,再生可能エネルギー出力調整,蓄電システムの経済性を考えるとともに,発電事業者や系統運用者の意思決定や送電システムの制約,FIP制度を組み込んだモデル分析を試みる.(5) エネルギー利用選択(主担当:田中誠・鳥海): (1)-(4)までの分析結果と消費者選好との関係を明らかにするため,社会調査・実験を実施し,それぞれのエネルギー技術の利用に関する支払意思額の推定を行う.特に,本年度は,昨年度に実施した調査結果を用いて,各エネルギー技術,核燃料サイクルに対する支払意思額の推定を行う.
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