研究課題/領域番号 |
19H02387
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
小柴 佑介 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 技術専門職員 (60419273)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 消火 / 火災 / 消火剤 / マイクロエマルション / 合成化学 / 火災安全工学 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目的は,高性能化かつリン資源の保護を志向した次世代消火剤の創製およびその分子設計に資する知見を得ることである.主に経済的枯渇リスクが小さいカルシウムおよび鉄化合物にフォーカスを当てる. 当初の予定通り,本年度は次の 3 つのアプローチで研究を行った.1 つ目 (サブテーマ 1) では,貧溶媒晶析法を用いた直接的ナノフェロセン/水分散液の調製方法の確立を行う前段階として,良溶媒水溶液の消火性能の評価を行った.2 つ目 (サブテーマ 2) では,分子設計に資する基礎的知見を得る目的で,いくつかのカルシウム化合物を用いて,消火性能と結合エネルギーの関係性を検討した.3 つ目 (サブテーマ 3) では,様々な有機溶剤を油相としたフェロセン含有マイクロエマルションの調製法の確立および油相種がその消火性能に及ぼす影響の評価を行った. サブテーマ 1 の結果,良溶媒に水と極小型共沸混合物を形成するエタノールおよび 1-プロパノールを用いた場合,1-20 vol% の濃度範囲で既存消火剤である強化液よりも高い消火性能を有することを見いだした.また,多変量解析を用いて消火性能の予測式を構築するとともに,蒸発特性が消火性能に影響を及ぼしていることを明らかにした.サブテーマ 2 の結果,特に酢酸カルシウムやアセチルアセトナトカルシウムなどが高い燃焼抑制効果を有することが分かった.また,速度論解析から燃焼抑制機構の推定を行うとともに,燃焼抑制効果と結合エネルギーの間に高い正の相関性があることを見いだした.サブテーマ 3 からは,n-アルカンおよび難燃性有機溶媒を油相としたフェロセン含有マイクロエマルションの調製に成功するとともに,その高い消火性能を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度において,上述したような基礎的知見を得ることができた.サブテーマ 1 およびサブテーマ 2 に関しては,得られた知見を論文にまとめ,学術誌に投稿した.サブテーマ 3 に関しては,国内学会で学会発表を行い,順次学術誌に投稿する予定である. なお,当初計画では次年度の予定であった新規鉄化合物 (短鎖パーフルオロカルボン酸鉄や dppf 錯体など) の合成にも着手し,その高い消火性能を見いだしつつある.以上のことから,概ね当初の計画通りに研究を遂行できていると言える.
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今後の研究の推進方策 |
令和 2 年度以降において,当初の予定通り,サブテーマ 1 としてナノフェロセン/水分散液の調製法の確立およびその消火性能の評価,サブテーマ 2 として様々な鉄およびカルシウム化合物の合成およびその燃焼抑制効果の評価,サブテーマ 3 としてフェロセン含有マイクロエマルション中の油相種が消火性能に及ぼす影響の体系的な探索を実施する予定である. ただし,令和 2 年 4 月上旬現在で世界的な感染拡大が起きている新型コロナウイルスの影響によって,研究が思うように進まないといった事態に直面してしまうことが想像に難くない.従って,許容できる範囲で予定通りに研究を進められるように準備を十分に行う予定である.
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備考 |
小柴佑介,ユビキタス元素戦略を志向した新規カルシウム系消火剤の創製,石灰石 422 (2019) 64-71
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