研究課題/領域番号 |
19H02388
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
岡崎 慎司 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (50293171)
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研究分担者 |
水谷 忠均 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究領域主幹 (00401232)
丸 祐介 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (20524101)
西島 喜明 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60581452)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光ファイバ水素センサ / エバネッセント波吸収型 / ファイバグレーティング型 / 白金担持酸化タングステン / 白金担持シリカ |
研究実績の概要 |
安全な水素社会の確立には、水素インフラの高度な維持管理技術が必要である。本研究では、空間的に広い範囲を容易かつ低コストでモニタリング可能な新しい水素漏洩監視システムを実現するために、光ファイバ自体を水素感応膜で修飾したライン型水素センサを開発することを目的とした。2019年度は、これまで研究代表者が培ってきた白金担持酸化タングステン及び白金担持シリカ膜作製技術を土台とし、その高度化・実適用性向上を目指して研究を行い、以下のような成果を得た。 水素との反応による白金担持酸化タングステン膜の光学特性変化を、190 nmから2700 nmまでの広い波長範囲で定量化した結果、光通信で一般的に使用される近赤外波長において十分な感度特性を有することが明らかとなった。触媒比率などを変化させ感度特性を調べるとともに透過型電子顕微鏡観察によって白金触媒の分散状態を確認することができた。エバネッセント波吸収型のセンサデバイスを実現するためには、光ファイバに沿って、そのコア上に水素感応膜を連続的に固定化する必要がある。そこで、石英コアにフロロアクリレートクラッドが被覆された光ファイバを選択し、熱分解や溶剤によるクラッド除去を試みた。その結果、エタノールアミンを用いることでクラッドを容易に除去できることが分かった。次に、水素感応膜を石英コア部に固定化した検出長50cmののセンサデバイスを試作したところ、光損失が約3 dBで、1 vol.%の水素に対しても良好な応答特性が得られた。さらに、シリカ膜をセンサデバイスに積層した結果。水素応答性には大きな影響を及ぼさずセンサ保護被覆として有望であることが分かった。 グレーティング型センサについては、水素の接触燃焼反応による大きな反応熱を発生させることができる白金担持タングステン膜及びシリカ膜の発熱挙動を赤外線サーモグラフィーを用いて観察することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は長尺の光ファイバ水素センサデバイスを実現するための基盤的検討を行ったが、白金担持酸化タングステン薄膜及び白金担持シリカ膜の高度化と耐環境性向上に資するデータを計画通り順調に採取することができた。さらに、それらの成果を国際会議で発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
水素感応膜の水素吸収あるいは発熱時には膜にひずみが生じ、長期安定性などに影響を及ぼす可能性があるため、高精度変位計による評価が必要となる。そこで、外部機関での機器利用を申請して、上述の評価試験を推進する。また、発熱や環境温度変化などにより光ファイバと水素感応膜の間に生じる熱応力を有限要素法により数値解析・評価を行い、十分な実適用性が得られる膜厚条件等を明確化する。さらに、水素応答特性の向上に関しては、膜の焼成温度・焼成時間等を制御することによる触媒のナノ微細化や局在化表面プラズモン効果の発現による高感度化を目指す。 光ファイバへの水素感応膜の固定化方法として、湿式のゾルゲル法を用いているが、本年度の試行結果では、光ファイバ長手方向に均一に製膜する精密な制御ができず、手作業で製膜を行っている。今後は、長尺ファイバに対して均一にディップコーティングができる治具などを考案・作製する。さらに、電子ビーム蒸着法などの乾式方法についても検討を行い、均質な長尺センサデバイスの作製方法を確立する。これらの検討で得られた知見を活用し、1本の光ファイバケーブル上に20箇所直列配置したセンサシステムを実現する。また、最終年度には宇宙ロケット用液体水素燃料タンク・配管システムを模擬したフィールド試験を予定しているので、試験評価項目・実施方法や評価に必要な機材の作製などについて十分な打ち合わせを行い、先導的なフィールド試験データを得るための検討を加速する。
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