研究課題/領域番号 |
19H02390
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
加藤 勝美 福岡大学, 工学部, 准教授 (50470042)
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研究分担者 |
岡田 賢 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (80356683)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自然発火 / 自然分解 / 爆発事故 / ニトロセルロース / 自己反応性物質 / 熱分析 / 危険性評価 / 耐熱試験 |
研究実績の概要 |
ニトロセルロース(NC)は、貯蔵中に自然分解し、その反応熱により自然発火する。関連する爆発事故を防ぐため、NC を貯蔵 する際には、定期的にABEL試験(JIS K 4810)による安定度評価を実施し、自然分解時に発生するNOx 発生量の大小を評価することが法令で定められている。 本研究では、ABEL 試験の安定度試験としての妥当性を検証すること、および、ABEL 試験の問題点を明らかにし、新しい試験方法を提案することを目的としている。 昨年度の研究では、異なる安定剤を含む様々なNCに対してABEL 試験を実施した。また、熱分析により試料が発熱分解するまでの発熱誘導時間を測定し、二つの測定結果を比較した。その結果、両者の間には相関性が認められず、ABEL試験によってNCの安定度を正確に評価できないことがわかった。 本年度の研究は、ABEL試験と同じ条件にて、NCから発生するNOx発生量を定量的に評価し、ABEL試験結果が発熱誘導時間と相関性を示さない原因を探索した。その結果、ABEL試験は65°Cにて8分間しか加熱しないため、ABEL試験の実施中にNCがほぼ分解していないことが要因と考えられた。次に、ABEL試験に代る試験方法を提案するために、NATO STANAGにて提案されているメチルバイオレット試験(MV)を、各種NCに対して実施し、昨年度と同様に発熱誘導時間と比較した。その結果、MV試験結果と発熱誘導時間の間には相関関係がみられ、MV試験によりNCの安定度を評価できる可能性が示唆された。MV試験は、試験温度が134.5°Cと高く、また、実験時間も35分と長いため、ABEL試験の問題点を改善できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究実施計画として、以下の2点を挙げていた。 (1)ABEL試験の安定度評価方法としての妥当性を検証し、ABEL試験により安定度が適切に評価できない原因を解明する。 (2)海外で運用されている安定度試験を実施し、発熱誘導時間との比較から安定度評価方法としての妥当性を検証する。 「研究実績の概要」に記載したように、この目標は概ね達成できたものと考えている。また、様々な安定剤を含むNCの安定度評価を実施する中で、従来安定剤として使用されていない物質がNCの分解を著しく抑制する実験結果が得られており、新規安定剤として期待できる物質を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1) MV試験にて安定度が高いあるいは低いと評価された試料に対して、熱分析を実施し、実際の貯蔵条件における当該試料の耐用年数を定量的に評価する。この結果から、望ましい試験の実施頻度など、将来的な規格化・法制化に当たって必要となる知見を得る。
(2) MV試験によってNCの安定度を評価できる可能性があるが、当該試験は、2gの試料を高温で加熱する必要があるため、試験実施中の爆発など安全面に問題がある。このため、検知管を使ったより簡便な試験方法を提案する。
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