研究課題
ニトロセルロース(NC)は、室温下で自然分解し、その分解熱が蓄積して自然発火する。このため,NCの貯蔵時には定期的に、Abel試験により安定度を評価することが法令で定められている。Abel試験は,試料を65 °Cにて加熱し,試料から発生するNOxと試験紙とを接触させる。試験紙が変色する時間(耐熱時間)が8分以上で合格,すなわち安定度が高いと評価される。本研究では、Abel試験が安定度試験として機能しているかについて検証を行い、より信頼性の高い試験方法を提案することを目的としている。昨年度までの研究では,Abel試験ではNCの安定度を評価できないことが明らかになった。一方、メチルバイオレット紙試験(MV試験)では、より正確に安定度を評価できることが示唆された。MV試験は、国連輸送勧告にて採用されている安定度試験であり、原理はAbel試験に類似しているが,試料加熱温度が高い(134.5 °C)点に特徴がある。本年度は、MV試験を我が国で運用する際の合否判定の基準値や実施頻度等について検討した。熱分析の結果,MV試験にて、国連勧告の基準値(耐熱時間 > 30分)を満たす試料は、NCの分解が促進される湿潤環境においても10年以上自然発火しないことが示唆された。この結果から、当該基準値は、我が国においてもそのまま使用でき、また、Abel試験と同じく、1年あるいは2年毎に実施すれば、十分に安全性を担保できるものと考察した。前述の通り、MV試験は安定度試験として有望と考えているが、NCを高温で2 gの試料を加熱する必要があり、試験中の危険性が懸念される。このため、検知管により発生するNOxを定量する試験方法を考案した。本方法の場合、約100 mg程度まで試料量を少なくしても、MV試験結果を再現できることが明らかになった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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火薬と保安
巻: 54 ページ: 28-33
日本産業規格
巻: In press ページ: In press
Thermal Analysis and Calorimetry