研究課題/領域番号 |
19H02394
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
栗橋 祐介 金沢大学, 地球社会基盤学系, 准教授 (30414189)
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研究分担者 |
小室 雅人 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (10270183)
玉井 宏樹 九州大学, 工学研究院, 助教 (20509632)
別府 万寿博 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 教授 (90532797)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 防災構造物 / 脆性破壊回避 / 超衝撃吸収積層緩衝構造 / 連続繊維シート / 衝撃実験 / 衝撃応答解析 |
研究実績の概要 |
2019 年度に実施した研究の成果は,超衝撃吸収積層緩衝構造の開発に向けた各種実験データの分析とそれに基づく緩衝メカニズムの解明である.超衝撃吸収型積層緩衝構造は,高機能発泡樹脂や超高強度コンクリートなどを積層して構成される.実験データとしては,応力-ひずみ曲線の形状や圧縮強度特性の異なる3種類の発泡樹脂と普通コンクリート RC 版を積層した場合の重錘落下衝撃実験結果を用いた.その結果,発泡樹脂の圧縮強度が大きい場合には,発泡樹脂の下面に伝達される応力が大きくなることや,その応力は材料試験結果よりも大きくなることが明らかになった.また,超高強度コンクリートの衝撃実験結果についても,多種多様なデータを用いて分析し,高強度鋼繊維の混入率を 2 vol.% とすることで,耐衝撃性が飛躍的に向上することを明らかにした.また,これらの結果を用いて,高機能発泡樹脂と超高強度コンクリート版を積層した場合に関する緩衝性能を試算し,次年度の研究計画に反映させることとした. 2019 年度に実施した研究成果の意義は,超衝撃吸収型積層緩衝構造の開発によって,既設防災構造物の押抜きせん断破壊を回避できるところにある.この押抜きせん断破壊の回避により,防護構造物の破壊モードが曲げ変形モードに移行するため,衝撃的外力に対してエネルギー吸収性能を最大限に発揮することが可能となる.これにより,既設防災構造物の安全性を経済的に確保できることから,安全かつ円滑な道路交通ネットワークの維持管理に貢献できるものと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,RC 版の衝撃実験を実施することとしていたが,超衝撃吸収型積層緩衝構造の開発を段階的に実施したため,RC 版の検討には到達していない.これは,超衝撃吸収型積層緩衝構造に用いる新材料の耐衝撃挙動の分析に時間を要したためである.ただし,これらの研究成果に関しては,国際ジャーナルに3編の論文を投稿するとともに,建築および土木分野のシンポジウムにて研究成果を公表している.また,次年度の実験のための耐衝撃設計やシミュレーションは十分に進捗していることから,総合的に判断して「おおむね順調に進捗」と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,2019 年度の研究成果を踏まえて,超衝撃吸収型積層緩衝構造の設置による RC 版の押抜きせん断破壊の抑制効果を検証する.また,実績のある弾塑性衝撃応答解析によるシミュレーションを行い,せん断破壊抑制メカニズムの解明や定量評価を実施する.また,防災構造物を模擬した RC 門型構造物に対しても,超衝撃吸収型積層緩衝構造の設置による押抜きせん断破壊の抑制効果やそのメカニズムの解明に向けた研究を実施する.FRP シート補強については,伸び性能に優れる材料を中心に,その耐衝撃性向上効果を実験的・数値解析的なアプローチで検討する. 最終的に,脆性破壊の可能性のある既設防護構造物をレジリエントな耐衝撃性能を発揮する構造物にリニューアル可能な補強工法を開発し,その設計法を提案する.
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