研究課題/領域番号 |
19H02395
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小森 大輔 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50622627)
|
研究分担者 |
川越 清樹 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (30548467)
峠 嘉哉 東北大学, 工学研究科, 助教 (90761536)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 流木流出メカニズム / 発生流木量 / 堆積・再移動流木量 / 流出流木量 / 斜面崩壊モデル / 流出流木モデル |
研究実績の概要 |
本年度は、流木流出統合モデルの日本全域への適用に向けて、検証データの整備を進めるとともに、2014年広島土砂災害および2018年西日本豪雨の事例を対象に、流木の発生、堆積・再移動、流出の各メカニズムを明らかにするために現地調査を実施した。また、2016年北海道・東北豪雨災害および2017年九州豪雨災害の事例を対象に、モデルの検証・高度化を行った。 モニタリング班に関しては、国土交通省および水資源管理機構の管理するダムのうち1996年以降の流出流木量データが測定されている日本全域62のダム流域を対象に、ヒンジ幅を用いた方法にて異常時流出流木量を抽出した。通常時流出流木量に関して先行研究と同様な結果が得られた一方で、異常時流出流木量に関して地域的特性が大きく異なることが示された。これらの成果は来年度以降のモデルの日本全域への適用の検証に用いられる。無人航空機を組み合わせたモニタリング手法は、対象事例(鳴子ダム・月光川ダム・四時ダム・高柴ダム)にて水面上に浮遊させた対空標識の標高座標推計精度を検証した。推計誤差は0.057-0.450mであり、来年度の三次元形状復元に適用できることが確認された。 斜面崩壊班に関しては、衛生画像より抽出した斜面崩壊域と植生図を用いて発生流木量の検証データを作成した。対象事例(北上川水系、筑後川水系、広島市呉市周辺)にて発生流木量推定モデルを検証し、入力される降水量の時間スケールおよびその時空間分布が発生流木量の予測精度に重要であることが明らかとなった。 モデリング班に関しては、対象事例(北上川水系、筑後川水系)にて流木流出モデルを検証した。推計された流出流木量は概ね高い再現性が得られた。いくつかのダム流域で高い再現性が得られなかった要因として、斜面崩壊量に起因しない発生流木量(例えば風倒や河畔林からの流木流出)が推察され、来年度以降に検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
モニタリング班に関しては、予定どおり広島県呉市および愛媛県肘川流域の複数の沢を踏査し、得られた調査結果は現在、河川技術論文中に投稿中である。予定どおり日本全域のダム流域における流木発生傾向の分析し、令和1年度土木学会東北支部土木技術発表会にて研究成果を報告した。無人航空機を組み合わせたモニタリング手法の開発も予定どおり進捗しており、第27回地球環境シンポジウムにて研究成果を報告した。 斜面崩壊班に関しては、予定どおり気象庁や国土交通省より諸データを収集・整備し、発生流木量推定モデルの検証・高度化に取り組んでいる。これまでに得られた成果は、第9回同位体環境学シンポジウムおよび令和1年度土木学会東北支部土木技術発表会にて研究成果を報告した。現在、得られた検証結果の国際雑誌への投稿準備を進めている。 モデリング班に関しては、予定どおり日本全国のダム貯水池で捕捉された流木量を収集・整備し、流木流出モデルの検証・高度化に取り組んでいる。得られた成果は、水文・水資源学会2019年度総会・研究発表会および令和1年度土木学会東北支部土木技術発表会にて報告した。北上川水系での検証結果は、河川技術論文集(小森ら、 2019)に、筑後川水系での検証結果は、土木学会論文集B1(横山・小森ら、2019)に採択された。現在、開発した流木流出統合モデルの構築に関して、Earth Surface Process and Landformsに投稿中である。 このように、当初の予定どおり研究は進められており、さらに論文もすでに2報採択・2報投稿していることより、当初の計画以上に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度に予定している日本全域を対象とした流木流出統合モデルおよび流域規模で想定しうる最大流出流木量の推定手法の確立に向けて、昨年度の現地調査および各モデルの検証・高度化を継続するとともに、日本全域のダム流域への適用を試みる。現地調査以外の研究は以下の3班で分業し担う。 モニタリング班は、日本全域を対象に流木流出前後の人工衛星画像などを用いて斜面崩壊域を抽出し、発生流木量推定物理モデルの検証に耐えうる過去の発生流木量を推定する。特に、発生流木量に起因する植生や立木密度の広域のモニタリングやダム貯水池に滞留している流出流木量のモニタリング手法は日本においてもまだ確立されておらず、昨年度購入した無人航空機やディープラーニングを組み合わせたモニタリング手法を確立する。 斜面崩壊班は、昨年度に引き続き研究代表者と研究分担者がそれぞれ開発した斜面崩壊物理モデルを対象事例に適用し、両者を比較検討して高度化を進める。特に、モデルの再現性が低かった事例ではモデルで表現されていないメカニズム(例えば河畔林からの流木流出)が考えられるため、現地調査から得られた知見を基に高度化するとともに、必要に応じてマルチアンサンブル化も検討する。モニタリング班の成果を用いて、高度化した斜面崩壊物理モデルを応用した発生流木量推定物理モデルを日本全域に適用し、検証する。 モデリング班は、研究代表者が開発した流木流出モデルの日本全域のダム流域への適用を試みる。特に、モデルの再現性が低かった流域では、早い流出特性と遅い流出特性を表現した2段直列タンクモデルでは表現できていない流出特性が存在することが考えられるため、現地調査から得られた知見や、必要に応じて現地調査を追加して、検証・高度化する。
|