研究実績の概要 |
世界初の流木流出の一連のプロセスに基づく流木流出統合モデルの構築(Komori et al., 2021)および堆積流木量を含めた流域規模での流木災害リスク評価を確立し、流木流出特性を解析した。 モニタリング班に関しては、2019年台風19号豪雨において大規模流木流出が発生した阿武隈川水系内川流域の山地渓流にて現地調査を行った。初年度の現地調査結果(肱川流域)に比べ、降水量や流木堆積特性は異なる反面、流木堆積に寄与する森林特性は同等であったことから、南日本と北日本における土石流の流体力の違いが流木堆積に影響を与えていることを森林特性の観点から示した.また、航空機LiDAR、森林GIS、環境情報からなるビッグデータを活用し、人工林の樹冠高成長について機械学習モデルを用いて高解像度で予測する手法を新たに開発した(Nakao et al., 2022)。 斜面崩壊班に関しては、新しい対象事例(2019年台風19号および2020年7月豪雨)にて斜面崩壊モデルを検証した。特に、モデルの空間分解能、土層厚・降水量の空間分布に関して感度実験を行い、モデル予測精度を最も高める適切な空間解像度を明らかにした(Sartsin and Komori et al. 投稿中)。また、航空機LiDARおよび無人航空機により作成した数値空間情報から、土石流の流体力とこれらの物理力に応じた森林による抵抗力を同定し、発生流木量の観点から流木の発生に係わる知見を明らかにした(川越ら, 2022)。 モデリング班に関しては、開発した流木流出統合モデル(Komori et al., 2021)を用いて流域規模での堆積流木量を考慮した流木の発生と流出の関係を示し、1)どの程度の降水量から大規模流木流出を危惧するべきか、2)流出流木量の期待値、3)流出流木ポテンシャル量の3つ観点からなる流木災害リスク評価を確立した。
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