研究課題/領域番号 |
19H02398
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
梅本 通孝 筑波大学, システム情報系, 准教授 (10451684)
|
研究分担者 |
鈴木 勉 筑波大学, システム情報系, 教授 (00282327)
川島 宏一 筑波大学, システム情報系, 教授 (00756257)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 風水害 / 住民避難 / 避難リテラシー / 広域避難 / 自治体間連携 |
研究実績の概要 |
研究初年度の2019年度には,(1)「全国での広域避難に関する取り組みの現状把握」として,行政界を越える広域避難計画の策定,他自治体からの避難受入施設の指定,相互支援協定の締結等の実態を調査し,広域避難対策の取り組みの現状について調査を行い,全国における水害時の広域避難対策の全容と実態の把握を図った。 (2)「水害時の住民の避難意思決定要因の把握」として,水害時の住民避難の実例を調査した既往研究の体系的レビューを行い,水害時の住民避難の促進要因と阻害要因を網羅的な抽出を図り,1982年の長崎豪雨水害以降に発生した水害に関する災害事例調査研究を対象とするレビュー結果について,広域避難の実現可能性の検討に資するべく分析結果と知見の再整理を行った。 (3)「全国を対象とした広域避難効果の俯瞰的評価とケーススタディ地域の選定」に関して,行政界を越える広域避難の実施効果についてGISを用いて分析手法の開発を行った。従来の避難開始地点から直線または道路ネットワーク上での再直近の避難場所を選択するのではなく,まずは浸水想定区域からの最短経路で脱出しハザードからの安全を確保した上で,その後の避難場所までの移動について浸水想定区域を避けた最短経路を選択するという,いわばevacuationの部分とshelteringの部分を分けて避難経路を設定する手法を開発し,鬼怒川流域の市町を対象に分析を試行した上で,対象を茨城県下全域に拡張して分析を展開し,今後の全国を対象とした分析のモデルケースとした。 (4)「海外の関連制度の調査とわが国との比較分析」に関して,わが国と同様に台風の影響を受け風水害の生じやすい東アジア・東南アジア各国を対象として風水害時避難をめぐる防災計画とその実施体制・方法等に関する調査に着手した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度の2019年度中に予定していた研究項目のうち,(1)「全国での広域避難に関する取り組みの現状把握」,(2)「水害時の住民の避難意思決定要因の把握」,(4)「海外の関連制度の調査とわが国との比較分析」に関しては,それぞれの調査に着手し,計画通り進行している。 一方,(3)「全国を対象とした広域避難効果の俯瞰的評価とケーススタディ地域の選定」に関しては,当初計画では,全国を対象対象とした分析を行う予定であったが,全国的な分析の実施に先立ち,詳細な分析手法の開発を優先することとし,茨城県内鬼怒川流域の市町を対象としたモデルケースにおける検討を通じて分析手法を確立した上で,対象地域を茨城県下全域に拡張して分析を行った。当初計画の全国を対象とした分析には至らなかったが,分析手法を確立できたことにより,次年度以降の効率的な分析の進捗に目処を立てることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画2年度目の2020年度は,(3)「全国を対象とした広域避難効果の俯瞰的評価とケーススタディ地域の選定」に関して,初年度に開発した分析手法を用いて,全国を対象とする俯瞰的なマクロ分析の展開を図る。河川や浸水想定区域等を横断することなく各避難場所へ安全に避難することが可能な圏域とその人口を同定することによって広域避難実施により住民の安全性の向上が期待できる「高ポテンシャル地域」を抽出し,後続の検討のケーススタディ地域とする。 (4)「海外の関連制度の調査とわが国との比較分析」に関して,東アジア・東南アジア各国を対象として広域避難をめぐる防災計画とその実施体制・方法等について文献調査及び現地調査を引き続き進める。 (5)「特定地域における広域避難対策の現状把握」として,新たにケーススタディ地域の市区町村を対象に文献調査及びヒアリング調査に着手し,現地における水害の被災履歴や現行避難計画,他市区町村への広域避難の取り組みの現況と課題等の把握を進める。 (6)「特定地域における住民の避難リテラシーの把握」として,他自治体への広域避難の実施効果が見込まれる地区とその周辺地区において,住民の避難リテラシーを把握するための住民調査実施に向けた準備に着手する。 2021年度以降は当初計画通りに研究を進行する。
|