研究課題/領域番号 |
19H02399
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
肥田 剛典 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (60598598)
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研究分担者 |
高田 毅士 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (10302762)
糸井 達哉 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (60393625)
永野 正行 東京理科大学, 理工学部建築学科, 教授 (60416865)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 人体 / 地震 / 人的被害 / 振動台実験 / 頭部傷害基準 / 超高層建物 / アンケート調査 / 行動難度 |
研究実績の概要 |
本年度は、超巨大地震時におけるヒトの姿勢制御メカニズムについて検討するために、ヒトを振動台に乗せて地震波による加振を行う振動台搭乗実験を実施した。振動台は東京大学生産技術研究所のものを利用し、入力波は実地震時の強震観測記録や様々な建物内で観測されたものを用いた。 実験には6名の被験者を用いた。振動台上の外周に6台のビデオカメラを設置して加振中の被験者の挙動を撮影した。また、被験者の床反力を計測するため、振動台上にフォースプレートを設置した。 次に、振動台搭乗実験のデータに基づき、人体の地震応答解析モデルを構築した。モデルは非線形台車型二重倒立振子を用い、フィードバック制御により立位姿勢を保持するものとした。実験の被験者の床反力中心(CoP)および頭部の挙動と人体モデルによるそれらの解析結果が対応するようフィードバックゲインを調整した。 また、2011年東北地方太平洋沖地震時における超高層集合住宅居住者への揺れの体感に関するアンケート調査に基づき、揺れの最中の行動難度についても併せて分析を行った。その結果、人体の地震応答解析モデルを用いて評価した最大CoP変位と行動難度の間に高い相関関係があることが明らかとなった。この検討に基づき、人体モデルを用いた地震時行動難度の評価法を提案した。 さらに、超高層RC造建物の地震応答解析を行い、得られた各階の床応答加速度を人体モデルに入力し、階ごとの人体挙動を求めた。得られた人体頭部の最大速度を頭部傷害基準値(HIC)に換算し、頭部の周囲物への衝突時における負傷度を求めた。その結果、人間の負傷可能性が高層階に向かって高くなる傾向にあることを示した。また、建物の最大層間変形角が設計クライテリアである1/100を超えないにもかかわらず,人間の物への衝突や転倒等の負傷被害が発生する場合があることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画では、本年度は振動台搭乗実験を実施し、その実験データに基づいて 人体の地震応答解析モデルを構築することとしていた。これに対し、本年度は実験の実施と人体モデルの構築に加え、超高層建物の地震応答解析を行い、各階の人間の負傷可能性を検討したことに加え、超高層建物における人間の簡易負傷評価法を提案した。 このように、当初の計画に加えて様々な成果が得られており、当初の計画以上に進展していると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに構築してきた人体の地震応答解析モデルは、振動台搭乗実験における1名の被験者の挙動を再現するためのものであった。しかし、人間は個人差により地震時の挙動も個人によって異なる。そこで、さらに多くの被験者のデータを収集するため、今後も引き続き振動台搭乗実験を実施する。また、外乱に対する人間の反応時間を計測するため、筋電位計を用いた加振実験も実施する。これらの実験結果に基づいて、人間の地震時の転倒メカニズムを分析する。 また、様々な構造種別や規模の建物の地震応答解析を行い、それにより得られた床応答を人体の地震応答解析モデルに入力し、どのような建物で人間が負傷する可能性が高くなるのかについて検討する。
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