研究課題/領域番号 |
19H02401
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
富田 孝史 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (20242836)
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研究分担者 |
水谷 法美 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (10209760)
千田 優 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 研究官 (70774214)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 津波 / 漂流物 / 津波火災 / 数値モデル / 模型実験 / リスク低減対策 |
研究実績の概要 |
漂流物モデルの構築において、漂流物の初期配置がその流動に及ぼす影響を深く理解するために、1つの漂流物(直方体模型)を対象に、漂流物の長軸と津波遡上流れがなす初期角度θを変化させた繰り返し実験を実施した。流れに直交する方向(y方向)の平均的な変位量は、とくにθ=30度の場合に大きく、これには流動初期に作用する揚力が影響していると推定された。y方向変位量における標準偏差はθに依存せずに流下距離の関数としてモデル化できた。つぎに近接して2個の漂流物を流れに対して直列および並列に設置して実験を行った。並列の場合では、とくにθ=0度のときに相互作用の影響が強く生じ、y方向変位量の平均値は単体のよりも大きくなった。直列の場合では、θ=90度のときに2個の模型は一体となって運動し、単体の場合と大きな差異はなかった。一方、θ=0度の場合には模型間の相互作用により、本実験の範囲ではy方向変位量の標準偏差が流下にともなって直線的に増大する特性が弱まった。 津波火災リスクのモデル化を東日本大震災のデータに基づいて実施した。岩手県山田町、岩手県大槌町および宮城県気仙沼市を対象にロジスティック回帰モデルを構築した。説明変数を吟味した結果、津波火災の発生の有無を判断する基本区画(250mメッシュ)のそれぞれにおける流失建物占有面積率、残存建物占有面積率および評価対象区画の海側に存在する複数の区画における流失建物占有面積率(SWb)が選択された。とくにいずれの地区においてもSWbが大きいほど津波火災のリスクが高まっており、これまで十分に評価されてこなかった、対象区域の周囲からの流入する瓦礫等を考慮することの重要性が示された。この結果から、沿岸部における可燃性漂流物の発生を抑えること、すなわち想定浸水深に対する木造家屋の強靭性の強化が津波火災に軽減に大きく寄与すると推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
模型実験から津波漂流物の流下に伴った平均的な位置およびばらつきの程度についてモデル化を行った。さらに、陸上で発生した津波火災について東日本大震災時の被害データに基づいた津波火災リスクのモデル化を実施した。しかしながら、気仙沼港で発生したような海域で発生する津波火災については発生場所を特定できるようなデータを入手出来ていないので、モデル化ができていない。ただし、陸上の津波火災リスクモデルから、津波火災のリスク低減策について一定の方向性は得られている。
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今後の研究の推進方策 |
津波火災リスクモデルに関して、津波漂流物の流動を阻害する丘陵地などの影響をモデルに組み込み、モデルの推定精度を向上させることを試みる。さらに、海域における津波火災の発生リスクについて情報収集を継続するとともに、モデル化を試みる。 当初計画では高知港におけるモデル適用を考えていたが、コロナ禍が続いている状況において現地調査が困難であることが想定される。再検討したうえで、適切な地域を定めモデル適用し、リスク低減策について提案を図る所存である。
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