最近のインドネシアの火山噴火についてマグマのテフラ、火砕流、溶岩流への配分比を現地調査、文献、シミュレーションによって検討した。2014年に発生したケルート火山ではプリニー式噴火が発生したが、テフラの量が94%を占め、火砕流は6%、溶岩流はなかった。一方、2007年噴火では溶岩ドームを形成したのでほぼマグマの全量が溶岩であった。メラピ火山の噴火は溶岩ドームの崩落による火砕流である場合が多いので、マグマの全量が火砕流になる。しかし、2010年噴火はより爆発的であり、火砕流シミュレーションによりマグマの25%が火砕流、残りの75%がテフラとなった。2013年12月以降、マグマ噴火に移行したシナブン火山では、溶岩ドームの崩落による火砕流が支配的であるので、火砕流が80%、溶岩流が20%、2016年以降は、火砕流が60%に減少し、テフラが40%に増加した。 これを我が国の噴火と比較した。2010年メラピ火山噴火に近いのは、2015年口永良部島噴火で、火砕流が29%、テフラが71%であった。最近の桜島南岳の噴火でも時々、火砕流が発生するが、8%程度であり、残りの92%はテフラである。爆発的な噴火ほど、噴出物のうちテフラの占める割合が大きいといえる。崩落型火砕流では、マグマのほぼ全量が火砕流となるが、爆発的な噴火では、火砕流が発生しても30%以下にとどまるといえる。 これらのうちでは、2014年に発生したケルート火山の噴火が最も爆発的であった。この噴火に前駆して2週間前から火山構造性地震が加速度的に増加した。この火山構造性地震のエネルギーから推定される噴出物量の上限は実際に噴出したテフラの量よりも2桁程度小さく、火山構造性地震のエネルギーはそれほど大きくない。注目すべきは、噴火の2-3時間前から急速に活発化した低周波地震の活動である。
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