研究課題/領域番号 |
19H02405
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川瀬 博 京都大学, 防災研究所, 特定教授 (30311856)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 強震動 / 動的破壊シミュレーション / SMGA / 滑り速度関数 / アスペリティ / 応力降下量 |
研究実績の概要 |
本年度実施したM6.7クラスの想定内陸地震に対する動的破壊シミュレーションのパラメトリック解析の結果得られたデータを行いて、滑り量分布と滑り速度関数の分布と特性について分析した。まず得られた滑り量の全体的な特徴とアスペリティ面積のスケーリング則について検討した。平均滑り量の1.5倍以上の領域をアスペリティ領域として抽出したところターゲットとした13ケースの平均で14%となった。さらにSomerville et al. (1999)に倣い周辺部の滑り量が平均の30%以下の領域をトリミングすると、それに対するアスペリティ面積の比は平均で9%となった。これは滑りの大きな領域が滑らかな形状をしているからである。
次に断層面上の滑り速度関数の空間分布とアスペリティ位置との関係を分析した。既往研究と同様に、浅部の堆積層内(1km以浅)ではスムースド・ランプ関数的形状をしているのに対し、アスペリティ内ではKostrov関数的形状をしているが、その滑り継続時間は破壊が進展するほど短くなる。最終滑り量は全体の分布形が非常に滑らかなのに対して、ピーク滑り速度はアスペリティ位置との相関が高く、特にその破壊進行方向にシフトして大きくなる。すなわち滑り速度関数がピーク値の大きなKostorov型の特性となるためには、大きな応力降下量を有する領域からの前方方向の破壊指向性が必要であり、破壊の進行に伴ってエネルギーが前方に集中することによってピーク到達時間の短いシャープな滑り速度関数となることがわかった。解析結果が震源近傍での経験的平均値を再現できていることからすると、震源近傍強震動は、現行の強震動予測レシピで仮定しているように、滑りの急激な空間変動ではなく滑り速度の急激な空間変動によって生じている可能性が指摘された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動的破壊シミュレーションの計算は当初計画通りに進行しており、その結果の整理も計画通り進んでいるから。ただ計画以上に研究が進んでいるとまでは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
震源特性の時間区分波形に基づく抽出が終わっていないので、今年度にはそれを実施する予定である。また震源特性の分析に必要な地震基盤レベルでの剥ぎ取り波の計算も実施し、その特性について分析する。また当初計画にない滑り速度の大きい高速滑り速度域(HSSA)が地表面速度に大きな影響を与えている可能性が判明したので、その抽出とモデル化にかなりの労力を投下する計画である。平行して、現状のアスペリティ内の応力降下量の設定ではアスペリティサイズが小さいことがわかったので、現実のサイズに近づけるためのパラメトリック解析を実施する。
当初計画ではサイズを大きく変動させた場合の動的破壊シミュレーションを通して、スケーリング則について検討する計画であったが、解析コードのパラレル化が予定よりも遅れており、大規模計算が長さ100km程度までしかできない状況である。しかし、10kmから100kmまでの計算でも断層幅が地震発生層内に収まるステージ1と地震発生層に達するステージ2のスケーリング則は十分カバーできるので、今年度にはそのパラメトリック解析を実施して、観測されている地震モーメントと断層長さ、断層幅、平均および最大滑り量、アスペリティの占有面積比とアスペリティ内の平均および最大滑り量、さらに最大滑り速度の大きい高速滑り速度域(HSSA)の占有面積比とその中での平均および最大滑り速度の関係を整理する。
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