本研究の最終目的は、定量的かつ広周波数帯域の強震動予測を可能とする次世代型強震動予測レシピを提案することである。そのために、応力降下量の深さ依存性を応力降下量分布に組み込んだ新しい断層動的破壊シミュレーション解析を行い、熊本地震での観測波形の基本性状が再現できることを確認し、構築されたパラメター設定方法に従って、規模・アスペリィ深さ・アスペリティ間隔、滑り弱化モデルにおける臨界すべり長さDcの深さ分布を変動させたパラメトリック解析を実施し、得られた断層面上の最終すべり量分布に基づいて次世代型強震動予測レシピを提案することにある。それに向けて今年度は以下の解析を行った。
1) 熊本地震の本震に着目して既往の震源インバージョン結果を参照して動的破壊モデルによる震源過程のフォーワード・モデリングを行い、最適化を図った3アスペリティモデルで断層近傍観測記録がよく再現できることを示した。その結果から得られた震源滑り量分布を運動学的インバージョン結果と比較したところ、概ねよく一致していた。滑り角の最適化を図ったところ約20度~30度の正断層成分が得られた。なお全26点中10地点では現状の想定されるモデルの範囲ではよく説明することができなかった。 2) 断層モデルによる観測地震動を再現するにあたって必要となる観測点固有のサイト特性を的確に把握する方法として、スペクトル分離手法により分離したサイト特性を各地点のサイト指標を考慮した上下増幅率と水平・上下比から周波数特性としてモデル化する方法を新たに構築した。 3) 上記の方法で得られた地盤特性を反映して熊本地震の矩形アスペリティを仮定した運動学的モデルによる震源インバージョンを実施し、より明瞭度の高い震源プロセスを明らかにした。滑り速度関数はアスペリティ内でコストロフ型の急激な立ち上がりを示す関数形である必要があることが確認された。
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